最後の異世界転生譚 ――Echoes Beyond the Aurora Manuscript――
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40話 頭巾で顔を隠しなさい
炎上するナルトリポカに突如現れたウツロの登場に、ダラクとハラヴァンは即座に「顔を隠せ」と反応する。二人はこの敵の正体をよく知っていた。ダラクはなおもシーナを殺そうとするが、彼女の命を守る結界は再び発動。そこにウツロの長槍がダラクの肩を貫かんと迫るが、なんと第三の存在がそれを防いだ。現れたのは、頭巾をかぶった少女ニァルミドゥ。
物語は転じて、翌朝。
ムーンケイで目覚めたガントールは、遠景に不穏な霧を見つけ、それがただの自然現象ではないことを直感。継承者たちの出発に何かが待ち受けていることを予感し、仲間の部屋へ駆け出していく――。
極限の一騎打ち→撤退という明確な緊張と解放があり、後半は静かな朝の空気とともに、異変の兆候が継承者たちに伝わる展開。
ダラクの刃を拒む、青く迸る奇跡。
尾を使って槍を弾く少女。
燃える集落と黒い鎧。
絵になる場面を盛り込んでいます。とくにウツロは会話ができないので、戦闘中は沈黙と緊張感が維持されます。読者目線では彼が転生者だと知っているので「何を思っているのか?」「どんな思いで戦うのか」と、興味をがっちり掴んでくれると期待しています。
41話 あれが朝霧かなにかに見えるのか?
朝、異様な煙を目にしたガントールは、直感的にただ事ではないと察知し、オロルの部屋へと飛び込む。ウツロの姿が宿にないこと、そして彼の手に握られていた損壊した長槍によって、昨夜のナルトリポカで何かが起きたことは明白となる。
継承者三名は出征を中止し、情報共有のためアーミラの部屋に集まる。ウツロの筆談により、アダンとシーナが重傷ながらもまだ生きていることが判明する。感情を抑えきれず飛び出しそうになるアーミラをガントールが制止し、行動の分担を提案。そこで、意外にもオロルが自らナルトリポカ行きを申し出る。
最終的にアーミラ&オロルがナルトリポカへ、ガントール&ウツロが前線へ向かうことに決定。物語は二つの任務を背負って別行動へと移る。
今話では理性的な緊張と重たい決断を丁寧に描き、物語のテンポを保ちながら進展しています。
これまでやや感情希薄で距離のある存在だったオロルが、自らナルトリポカ行きを申し出るという意外性。しかも理に適った理由と戦略性に満ちた言動で株が急上昇。
ウツロは全編でセリフゼロにも関わらず存在感抜群。主役じゃない風に見せながら、影の実力者として活躍してくれます。
42話 一つ頼みごとがある
オロルは、アーミラとともにナルトリポカへ向かう手段として、なんと杖ごと投げてもらうという荒業を提案。獣人種の膂力によって天球儀が遥か空高くへ飛び、杖の中のアーミラとオロルは空中からナルトリポカを目指す。
空中からの移動と着地には、オロルが秘匿していた蜘蛛のような何かを操って減速・着地する。
降り立った土地は、かつて豊かだった甘藷黍《かんしょきび》畑。しかし今は焼かれ、焦土と化していた。
重たいシーンが続いたので、ガントールにぶっ飛ばしてもらいました。
杖の設定を有効活用。
オロルの隠された能力匂わせ。
甘藷黍の畑焼失という痛手。
ファンタジー要素を描写しつつ、畑を失ったことで輜重の貯蓄に打撃を受けていることを書いています。
ガントールの「私の守りたい人が前線にいる」という告白、個人的な想いをちらっと覗かせるシーン。
アーミラは失われた記憶の温もりと現実の焦土とを結びつけることで、戦う意味が確立し始めた瞬間を丁寧に描写。
43話 最善を尽くすためじゃ
オロルとアーミラは、焼け野原と化したナルトリポカでアダンとシーナの救助に成功する。
焼け焦げた町を進みながら、アーミラは己の家や知人を次々と確認していく。そして広場に集められた大量の焼死体の山の中に、かつて自分に石を投げた領主の娘を見つける。
涙を流して怒っている……修羅が立つ。
第二部出征編の最初の章で、アーミラは明確にターニングポイントを通過しました。