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09 勇名の矜持 前編 続き

最後の異世界転生譚 ――Echoes Beyond the Aurora Manuscript――
https://kakuyomu.jp/works/16818622171006782162


67話 恨むことで立ち上がれるやつは確かにいる
ウツロとイクスは、トガの討伐を口実に南方の防壁近くまで遠征する。だが一体目の討伐は既にアーミラが成し遂げ、次こそは目の前で見ようと西に移動。途中、イクスは自身の心情を吐露し、「恨み」が唯一の拠り所であることを明かす。そこへ飛来したのは、これまでにない有翼のトガ――それも七体の群れ。異常事態にイクスは邸の防衛へ向かうよう提案し、自らも縮地術を使って姿を消す。
一方、邸内ではアーミラが穏やかなひとときを過ごしていたが、ニールセンとの会話の中で、イクスがかつて隊長だったことが明かされる。

翼の有無の重要性についてはこれまであまり触れていませんでしたので、やや突飛な設定のように感じるかも(天帝ラヴェル一族以外に翼を持つものは登場しないように気をつけてはいました)。

この話でようやく「イクスが元隊長」が確定。ずっと揺れ動いていた事実関係が固定され始めて、反対に状況は動き出します。


68話 人は鏡
アーミラはイクスの過去をニールセンから聞き出し、彼が部下を殺した可能性に直面する。真実が不透明な中、イクスとウツロは有翼のトガ襲来に立ち会い、アーミラの驚異的な討伐の様子を目撃。冷静さと非情さが共存するその戦い方から、アーミラが恨みに囚われていることが明白になる。イクスはウツロに「人は鏡」であると説き、自らが変わることでアーミラを導けと諭す。

冒頭からアーミラの疑念とイクスの過去が対比され、緊迫した展開の中で情報が明かされる構成。イクスの行動が徐々に信頼へと転じる流れになっています。代わりにアーミラの内面の問題が浮き彫りに……。


69話 感情を喪失した者が
舞台は一転し、禍人領の地下拠点へ。
失敗を重ねて命の危機にあるダラクは、ハラヴァンやニァルミドゥと共に地下深くへと進む。彼らの目的は、『空の器』と呼ばれる存在を用いた『龍体術式』の完成。失敗作とされた繭に囚われた少女ユラ、そしてその妹ヨナハの存在が、この先の悲劇的展開を示唆する。
「感情を喪失した者」が術式の素体になるという事実が明かされ、希望を奪うための残酷な策略が進行する。繭《ユラ》は激しく抵抗するが、その叫びは届かない。一行は次なる犠牲を求めて地下へ進む――。

今回は禍人勢力の内部事情が主軸になっており、物語の裏側を描く回。
地下構造内で展開するので息が詰まる緊張感が演出できたと思います。
この先は容赦のない展開です。


70話 最後に残ったのは
一行はヨナハを発見する。
排泄物にまみれた中で生かされてきた彼女は、飢えと絶望の極致にあり、もはや人間としての尊厳を失っていた。
ハラヴァンの残酷極まりない言葉と実験により、姉《ユラ》の糞を食べさせられていた事実を突きつけられたヨナハは、絶望の果てに感情を喪失し、空の器として完成する。
ハラヴァンは詠唱を行い、ヨナハに龍体術式を施す。

おそらく読者の予想を裏切る展開です。場面も壮絶ですし、救いがないし、メインキャラになりそうなニァルミドゥがあっさり退場してしまう。作者として生理的嫌悪感を極限まで引き出すように、心のブレーキを外して書きました。映像化は望めません。
この狂気に満ちたハラヴァンの行動と比べれば、ダラクのイカレ具合なんてかわいいものでしたね。


71話 用済みだとは言っていませんよ
ヨナハの変容を見届けた後、ハラヴァンはダラクと共に上階へ。途中、彼に「なぜ逃げ帰ってきたのか」と問いかける。ダラクは鎧《ウツロ》の弱点を発見したと告げ、用済みにならぬよう嘘と誇張で己の価値を説く。
そこへ登場したのは、醜悪な呪術師エンサ。ダラクは切り捨てられないよう必死に自分の必要性を主張する。ハラヴァンは「用済みではない」と言いつつも、ヨナハの龍体化にはニァルミドゥですら触媒として喰わせたばかり。
そして繭の中のユラを激昂させ、嫉妬の欠落者も覚醒する。

ヨナハとユラ、2話続けて敵戦力が目覚める展開。前話ほどのグロテスクな描写は控えめながら、冷酷さ、緊迫感、支配感を表現。えぐ過ぎた物語の品位を修復します。

ハラヴァンとの駆け引きの中で、どんどんダラクの人間臭さが出てきてキャラ立ちしました。生存本能に忠実で、他者を蹴落とすことに躊躇がない突き抜けた悪役で不思議と嫌いではないです。


世界観重視なので、「蚩尤」など難解な用語が補足なしで登場しております。読者によってはやや理解に難があるかもしれませんが、雰囲気で理解してもらえれば問題ありません。後で言葉の意味も回収されます。

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