『CRUMBLING SKY』
https://kakuyomu.jp/works/16818622175236685267静かな絶望と歪な絆の萌芽。
前半『武蔵関公園にて』
エピローグから別視点でスタート、本作の主人公〈尾鳥〉から物語が展開されます。
幻想的な独白から始まり、少女と出会う流れは詩的で美しい一方、不穏なリアリティが漂う構成。
小夜の挑発的な言動とその裏に隠された「助けて」という叫びが言外から読者に迫り、尾鳥の選択(未成年を保護するという法的グレーゾーン)に説得力を持たせています。
尾鳥の態度は終始ギリギリのバランスで保たれており、倫理を逸脱するかしないかの境界線を彷徨う緊張感があります。これは本作でずっと持続することになります。
夜の舞台を武蔵関公園とすることで、SF設定でありながら現実感を持たせました(実在する公園です)。
後半『家出少女と安全な夜』
出会い〜仮初の保護が描かれた前半の非日常の怪しさから一転、このセクションでは保護した後の現実的な生活空間で物語が展開され、リアリティの部分を補強。
部屋に連れ帰る→シャワー→会話の誤解と明確化→少女の再訪と居場所の懇願と、意外と忙しく進んでいます。
時間的には一晩と翌日の午前~昼、非常に短時間の出来事にもかかわらず、人間関係は急速に深まっていき、ラストのファミレス場面でやっと名前の交換。保護した少女がエピローグの饗庭小夜だと判明。読者は小夜の家庭の惨状を知っているので、尾鳥の保護を「良い選択」だと感じられますが、尾鳥自身は小夜の家庭を把握できていません。
この、危機的状況の把握が一歩遅れていることのハラハラ感。早く小夜を助けてあげて欲しい……。