ひゅうどろろ。 生ぬるい風が吹き抜ける江戸の町の一角。そこで毎夜、蝋燭を共に語り合う幽霊侍・若林琥太郎と櫟屋の看板娘・お藤──二人は密やかに和やかに話に花を咲かせる。怪談話、恋の…

「人間って美味しいのかな」 うだるように暑い夏の日に、ミナ先輩は突然そんなことを呟いた。聞けば、ひとつ喰らえば不老長寿と謳われる、人魚の肉を食べたと言う。 語りながら少しずつ変化…

　都の外れで、女が捻り殺された──「ねじりおに」と呼ばれ恐れられたその鬼の呪いを祓うは、怪しい面で顔を覆った男と、少年法師の二人組。 「失礼、失礼、勝手な呪いなど返して仕舞えば良…

これはむかしむかしの物語。 鬼の頭領である桃姫は日々＂狩り＂をしながら平和に島を治めていた。ある日のこと、幾許かの人間が島に攻め入って来たとの知らせがあり、桃姫の夢と城が崩れ始め…

「あの子が笑っている。こちらを見ている」 はじまりはありきたりな作り話からだった。 ひとの口からひとの口へ、「あの子」は在り方を歪に歪めながらどんどんと伝播していく。

深夜、コンビニの帰り道。僕はゴミ捨て場で生首を拾った。 ※KAC2023参加作品「深夜の散歩で起きた出来事」

萬頼まれ事請け負い〼――――その店、号して『楽之稀屋（たのまれや）』。 どこか、いつか、ふとした瞬間にだけ繋がるという摩訶不思議なその店は、働く面々もやってくる人々もまた不思議…