今まで溜め込んだ原稿を出してます
好評だったらもしかしたら続き書くかも
タイトル
決まってない
あらすじ
あらすじ
孤島の禁忌の神社に、幼くも200年以上の歳月を生きる少女が幽閉されていた。
感情、記憶、肉体の一部を妖怪に奪われ、まるで木偶の坊のように虚ろな存在となっている。
ある日、村の少年が偶然少女を見つける。
彼が手にした不思議な杖が、三人の運命を絡め、怪異たちとの戦いの幕が上がる。
力を合わせ妖怪と立ち向かう中で、少女は少しずつ失われた感覚を取り戻していく。
少女が“全て“を奪われた理由。
少女の過去、なぜ怪異に襲われるのか。
三人が、全てを解き明かす物語。
第一話 推敲❌
儚げな、だれか
とある絶海の孤島に住む少年。
その少年が、山へと山菜をとりに来ていた。
山の奥、ふだんは誰も足を踏み入れない小道を登っていく。
春先の冷たい風が葉の隙間を縫い、足元には小さな山菜が顔を出していた。
根を張ったままのフキやゼンマイを慎重に見分けながら、網袋に詰めていく。
「いっぱいあるじゃん。これはみんな喜ぶぞ〜」
少年が崖の側面にある山菜を取ろうとしたその時、少年は足を踏み外した。
「やべ…」
ゴロゴロゴロ
がっしゃん!
斜面の下へと転がった。
膝を擦り、泥だらけになった身体を起こすと、草に覆われた小さな石段が目に入る。
その先には、朽ちかけた鳥居と、蔦に覆われた古びた神社があった。
誰も入れないはずの場所。
誰も近づかない場所。
地元でも「近づくな」と言われてきたその神社に、なぜか足が向いてしまった。
好奇心か、それとも別の何かが引き寄せたのかはわからない。
苔むした階段を登ると、境内の片隅に一本の杖が落ちていた。
荒削りな棒っきれでできており、杖の上部には青色に輝く水晶が取り付けられていた。
その杖は、不思議と吸い寄せられるような雰囲気を放っている。
手に取った瞬間、木のぬくもりと共に、奇妙な感覚が全身を駆け抜けた。
「見つけてくれたんだね」
頭の中に直接響くような声がした。
「誰だ!」
咄嗟に振り返ったが、誰もいない。
だが、確かに声が聞こえた。
不思議がりながらも、拝殿の奥へと歩みを進める。
床板は抜けかけ、蜘蛛の巣が張り巡らされている。
灯りもないのに、不思議と足元は見えた。
どこか懐かしいような、けれど言葉にはできない何かが、この空間に漂っていた。
そして、最奥の小部屋。
扉を開けた瞬間、そこにいた。
少女が、座っていた。
白い布のような衣を纏い、肌は蝋細工のように白く透け、目には光が宿っていなかった。
杖の水晶の光の反射を元に、その者へと近づく。
「っは…!」
その少女の姿を見た瞬間、恐怖で腰が抜けてしまった。
耳、口、鼻、手足も未完成で、まるで人の形を真似た人形のようだった。
だが、不思議と怪魔のような威圧感はなく、むしろ安堵するような温もりすらも感じられた。
少年は立ちあがり、恐る恐る少女に触る。
「……」
体が冷たすぎる。
だが、確かに動いている。
少女を触った手を見てみると、赤い液体が付着していた。
「すんすん…」
匂いを嗅ぐと、金属のような匂いの中に、生臭い腐臭のようなものも混ざっていた。
間違いない。
これは血だ。
だが、出血しているような箇所はない。
まるで、筋肉のみが露出しているようだ。
少年は声をかけてみることにした。
「おーい…」
声をかけても、反応はない。
ただ、静かに顔だけをこちらへと向けていた。
眼球はないが、目があったであろう窪みはある。
視線すら、本当に合っているのかもわからない。
その少女は、少年に手を伸ばす。
少年もそれに合わせるように手を差し出す。
その瞬間、また声が聞こえる。
「少年、そこまでだ」
少年は咄嗟に手を離し、少女を背にして前を向く。
「私はここだ」
今度は下の方から聞こえた。
「そんなに強く掴むな。少年よ」
少年は声が聞こえたであろう下を見る。
すると、先程まで掴んでいた杖の上部が眩く光っている。
「杖が、喋ってる…?」
少年は理解に苦しんだ。
ただの木の棒と青い石。
それが喋っている。
「さっき頭でも打ったのかな…」
少年はそうぼやいた。
「残念ながら全て現実。その少女も含め」
信じがたいはずの状況。
けれど、杖の声には奇妙な説得力があった。
どこか人を諭すような、けれど感情のない調子。
「なあ……この子、なんなんだよ」
そう問いかけたときだった。
神社の外、木々のざわめきが止んだ。
風も止まる。音が、消えた。
「騒ぐな。“何か“が来る」
杖の声が、低くなる。
「何か?」
その言葉が口を離れる前に、鳥居の外から――黒い影が境内へと滑り込んできた。
それは形容しがたい異形だった。
かなりの巨体で黒く滲むような身体に、顔の中央だけが白い仮面に覆われている。目も口もない。
手には爪のようなものが伸びているが、それが武器なのかもわからない。
ただ、その動きに一切の迷いがない。
一直線に――少女を目指している。
「おい、あれは……! おい!」
「動くな。お前を狙っているのではない」
神社の床を軋ませ、妖怪が滑るように接近してくる。
ひと目で分かった。
このままでは直線上にいる二人とも、少女まとめて喰われる。
「やめろよ!!」
叫びと同時に、杖を構える。
光が視界を焼き、鼓膜に振動が響く。
「我を掲げて、あいつに向けろ!!!死ぬぞ!!!」
「そんなん言われても…」
少年は状況がよく理解できていなかった。
だが、あと数秒で命も消える。
「ああもう。どうにでもなれっ!」
覚悟とともに、杖が再び光を放つ。
足元の空気が歪み、地面がうねる。
直感的に、杖を振り上げると、風のようなものが弾け、妖怪の動きが一瞬止まった。
しかし、それだけでは倒れない。
すぐさま異形が跳ねるように飛び上がり、こちらへと迫ってきた。
とっさに杖を構え直し、突き出す。
空中で何かがぶつかり、爆ぜるような衝撃。
目の前で光が炸裂し、仮面にひびが入った。
妖怪の動きが鈍る。
「今だ。迷ったら今度こそ皆殺しだ」
光に包まれた杖が、一瞬だけ重みを変える。
引かれるように振り下ろすと、先端から青白い閃光が放たれ、妖怪の中心を貫いた。
風が吹き抜けた。
異形は声を発することなく、そのまま空気に溶けるように崩れ落ち、消えた。
跡には、仮面の破片がひとつだけ残された。
だが、その仮面もすぐに塵となって消えた。
静寂が戻る。
荒い息を吐きながら、身体の力が抜けていく。
少年はその場に倒れた。
額から冷たい汗が流れた。
何が起きたのか、完全には理解できない。
ただ、少女が危険にさらされたこと、そしてそれを――守ったという事実だけが残った。
「何が、起こったんだ…?」
少年は床に倒れ込みながら、杖にそう聞く。
「先のは怪魔」
杖はそう言ったが、イマイチピンとこない。
「今で言う、妖怪みたいなものか?」
「その妖怪とやらはわからない。だが、あれはこの世の“自然”ではない」
杖は相変わらず話していた。
抑揚のない、どこか機械的な口調。
それが不気味であると同時に、妙に安心もさせる。
「怪魔……それが、この少女を狙ったのか」
答えはない。
ただ、杖の青い水晶が一度だけ微かに光を放った。
うつ伏せのまま、視線を少女へと向ける。
その瞬間、少女を中心として光が部屋中に流れる。
「っく…!」
少年は溢れ出る光に耐えきれず、咄嗟に目を腕で覆う。
微かな風も感じる。
数秒間続いた後、目を開ける。
少女の体に異変が起きていた。
耳が、できていた。
白く透き通る蝋細工のような頭に、左右対称に、小さな人間の耳。
まだ完全ではない。
形も粗く、血管が浮いているようにも見える。
だが、それは間違いなく――音を聞くための器官だった。
「まさか、お前が守ったから……?」
そうつぶやくと、少女の身体がわずかに反応した。
だが、少女は片腕で必死に耳を抑える。
不完全な体で、必死にもがいている。
かなり苦しそうだ。
少年は咄嗟に少女の状態を察知し、片腕で塞いでいない方の耳を自身の手で抑える。
少年は自身の着ていた服の布を破り、少女の耳に詰める。
顔を上げる。
目は相変わらず窪んだままで、光は宿っていない。
それでも、はっきりとこちらの方へと首を向けた。
「聞こえてるのか?」
返事はない。
ただ――少女の手が、また、ゆっくりと動いた。
ぎこちなく、無表情のまま、だが確かに目的を持っているように。
その手が、そっと少年の袖を掴んだ。
さっきと同じ動作。
でも、それは確かに「意志」がある。
握る力が、ほんの少しだけ強くなった。
「この少女は、怪魔に記憶、感情、肉体の一部を盗られた存在だ」
杖が淡々と告げる。
「………」
少年は言葉が出ない。
「正確には、“元々の構成が欠けている”。この神社に“封じられていた”状態では、それも当然か」
「どういうことだよ、それ……」
「あの少女と、私を語るには少し時間がいるが、それでもいいかい?」
少年は頷いた。