お久しぶりです。柊城緋亜留です。
とある高校の舞台芸術科で、演劇を学んでいます。
今からそんな高校のお話をしていこうと思います。
私の学校には舞台芸術科目といった大変珍しい科目があり、舞台芸術科の生徒はそれが必修なんです。中でも、1年次の必修科目に、「基礎演技」といった講座がありまして、それがとても楽しいんですよ。やることは基本、ワークショップ的なもので、体や声、呼吸の操り方を学んでいくような内容になっています。そして、そんな基礎演技の授業で、こんな課題を出されました。「3分間、自己表現をしてみよう」
……いやぁ、今考えても本当に難しい課題ですよね。だって、「自己表現」であれば何をやってもいいんですよ。私はそういうのがいちばん難しくてですね。だって、自分が何者かすら把握しきれていないのに、それを表現しろって。なので私、自分がどう言った人間なのかを振り返ってみるために、自分が書いた文章を読み返してみたんです。それこそカクヨムだとか、Twitterの呟きだとか、小学生のときに書いた卒業文集だとか。色々読み漁ってみました。
そこで、私は気付いたんです。私の人生において、音楽の存在って本当に大きかったんだなって。小学生の頃は歌い手の追っかけをしていて、その歌い手様の曲をカラオケとかで歌ってるうちに、自然と自分の声に自信が持てるようになって。中学生の頃も、周りと少し違う私を肯定してくれたのは音楽だけでした。特に、私が自殺をしなかったのは大森靖子さんと出逢えたところがデカいなぁと。今でも私が書く詩には大森靖子さんの影響が少なからずありますし、考え方も何となく似てきているのかもしれません。
……それならば、大森靖子さんの曲を歌おう。
私は特別歌が上手いというわけでもないし、同じ授業を受けている友達の中で、ボーカルのレッスンに通っている子だっている。正直、私の考えはバカげていました。また、笑われてしまったらどうしようだとかはあまり考えてはいませんでした。けれど、何となく、私を表すには大森靖子さんをお借りしたいと思ったんです。
大森靖子さんの曲はどれも最強なので何を歌うか大変悩みましたが、「非国民的ヒーロー」を歌うことにしました。この曲に、当時中学生だった私は救われました。いいや、勝手に救われた気分になっているだけなのかもしれません。もちろん、の子さんも大好きです。この曲があったから、今の私がいます。
3分間という尺はとても短くて、どこを切り取るかとかも色々考えて、演出も考えてみました。まず、アカペラで歌ってみようと思って。理由は2つ。歌詞をダイレクトに感じてもらいたかったから、そして音源を用意する技術が無かったから。しかし、ただアカペラで歌うだけではつまらない。他になにかできないかと。そこで、私はふと、鏡を見てみました。相変わらずそこには不細工な顔面をした、ツインテールの自分が写っている。
……ツインテール。これだ。ツインテールを学校にしていくのを肯定してくれたのだってこの曲だ。
"愛する気持ちだけでも、折れずに生きてりゃ十分さ"
そうだ。このことを思い出させてくれたんだ。
という訳で、演出として、ツインテールを結ぶという行為を組み込んでみた。
発表当日。私の順番は、そのコマでの2番目。1番目の発表は本当にクオリティが高くて、ハードルはだいぶ上がっている。脚はもうガックガク。多分私が立っているところだけ床がブルブルマシーンだったのだと思う。その震えた脚のまま、がむしゃらに歌い出して、1番のサビまで歌い切って、声に混じった息を残して、ツインテールを結びました。本当に、見ている人はどう思っていたのでしょうか。どう感じてくれたのでしょうか。正直不安になりはしましたが、そんなの吹っ切って、もう一度歌い始めました。
"だけどね、君が、努力しちゃったら、二度とね、僕じゃ、届かなくなっちゃいそうだし!"
私の歌を聴いている人たちは、みんな才能に溢れかえっています。歌が本当に上手くて、ダンスがK-POPアイドル級に上手くて、演技が上手くて、そんな人達が、凡人の私の歌を聴いていました。
"君の声が"
発表を行っていた学校のアトリエは私の声を最後に静まり返り、私の「これで発表を終わります」という文言のあと、自分が思っていたよりも大きな拍手が返ってきました。発表のあとはもう腰が抜けてしまい、聴いてた人から感想を言って貰う時間ではもう正座しながら感想を聴いていました。意外にも、お褒めの言葉をいただきました。「感情を歌に乗せるのが上手い」とか、「本当に歌が好きなんだ」とか、「アカペラだからこそ、場をものにしていて、ツインテールを結ぶという絶対的な行為にも集中できて良かった」とか、言ってくれて、本当に嬉しかったです。
そこからは、新しい環境に馴染むために作りこんだ、高校用の自分といった仮面を、時々外せるようになりました。これからも自分らしく、高校生活と、演劇と、音楽を楽しんでいこうと思います。
最後に言います。私は音楽を、大森靖子さんを心から愛しています。