公開戦闘力で見ると、Silent Tomcatチェッカー通過はほぼゼロです。
Silent Tomcatの公開戦闘力を 8.60〜8.80級 と置くなら、ここまで見た選出作は、参考点・テーマ適性では健闘しても、Web上で自然に読者を引っ張る力では届いていません。
## いちばん近い
『護衛と姫君』
公開戦闘力では、この中でかなり上です。全3話で短く、王女と護衛、死別、雨夜の夢、雨の向こう側、老後の迎えまで読者報酬が明快です。恋愛読者に届く筋もある。
ただし、爆発的な入口フックではありません。静かな死別恋愛なので、Silent Tomcat級の公開戦闘力までは届かない。
公開戦闘力:7.6〜8.0前後
Silent Tomcat公開チェッカー:非通過、ただし最接近
## 次点
『壊れた勇者は、もう治らなくていいと笑った。』
入口の看板は強いです。「壊れた勇者ほど強い」「治すと弱くなり国が滅ぶ」はWeb読者にも説明しやすい。プロローグの赤い月、モンスター、壊れた勇者たち、最強勇者ザラトーリスの登場も派手です。
ただ、重い。説明が硬い。PTSDという語の直載せも読者を選ぶ。商業企画の核は強いですが、毎話報酬としてはやや重く、読む側に体力を要求します。
公開戦闘力:7.4〜7.9前後
Silent Tomcat公開チェッカー:非通過
『明日の勇者は昨日へ向かう』
設定看板はかなり良いです。魔王討伐後100日目から一日ずつ過去へ戻り、死んだ仲間と出会う日に向かう。この一文は強い。
ただ、本文の読ませ方は静かです。祭り、街の変化、復興、遺体、仲間再会へと積む構造なので、即時の快感より余韻型。Web初動ではかなり取りこぼします。
公開戦闘力:7.2〜7.7前後
Silent Tomcat公開チェッカー:非通過
## 参考点は通るが、公開では弱い
『狸の郷のおひいさま』
参考点・テーマ適性ではかなり強いです。けれど公開戦闘力では、『護衛と姫君』より落ちます。和風、狸、結界、契り、九度の転生、出家、神格化。美しいですが、読者に即返る報酬は苦い。
「宿命の伴侶」への回答としては上質。でもWeb読者を広く引き込む力は控えめです。
公開戦闘力:7.0〜7.5前後
Silent Tomcat公開チェッカー:非通過
## かなり厳しい
『金の魔女と銀の娘』
復讐者と魔女に似た銀の少女という関係フックはありますが、公開戦闘力としては中位。低★発掘としては分かるが、入口で強く読者を奪うほどではない。
公開戦闘力:7.3〜7.8前後
『ネクロマンサー〜手紙が紡ぐ旅路〜』
死者の軍事利用は良い素材ですが、本文が説明寄りで、入口報酬が遅い。
公開戦闘力:6.2〜6.8前後
『魔王因子の落ちこぼれ』
テンプレ覚醒ざまぁとしての最低限の看板はありますが、逆に既視感が強く、本文固有の牽引が弱い。
公開戦闘力:6.7〜7.3前後
『外が見たいダンジョンの人形劇』
寓話としては見どころがありますが、Web公開戦闘力はかなり低いです。読者報酬が静かで、棚も狭い。
公開戦闘力:6.5〜7.1前後
## 結論
公開戦闘力だけで見るなら、
通過なし。
近い順に並べると、
1. 『護衛と姫君』
2. 『壊れた勇者は、もう治らなくていいと笑った。』
3. 『明日の勇者は昨日へ向かう』
4. 『金の魔女と銀の娘』
5. 『狸の郷のおひいさま』
です。
かなり重要なのは、参考点通過と公開戦闘力通過が完全に別ということです。
『狸』は参考点・テーマ適性では上位。
でも公開戦闘力では『護衛』に負ける。
『壊れた勇者』はテーマや制度の骨は強い。
でも本文が重く、読者報酬が硬い。
『明日の勇者』は看板は強い。
でも初動が静か。
Silent Tomcatを公開戦闘力チェッカーにすると、選出作はかなり落ちます。
これは「低★発掘として意味がない」ではなく、受賞・選出作と公開で伸びる作品は別物だということが、かなり露骨に出ている感じです。
Q.1人の選考委員に3つ選ばせるのはいい。しかし作品の質の担保が取れていない。
1人の選考委員に3作選ばせること自体は、悪くないです。
むしろ狙いとしては分かります。
ランキングでは拾えない作品を拾う。
選考委員ごとの個性を出す。
低★作品にも光を当てる。
「この人はこういう読み筋で選んだ」という色を出す。
ここまではいい。
でも、その前提として、最低品質ラインの担保が必要です。
今回見ていると、選考委員によってかなり差があります。
宿命の伴侶部門の『狸の郷のおひいさま』は、部門テーマをかなり精密に読んでいます。契りの印、九度の転生、結界の代償、「珠乃として見てほしい」という痛点まで、テーマに対する回答になっている。
『護衛と姫君』も、主従・死別・雨の向こう側・老後の再会まで、読者感情に届く形で閉じている。
この2作を見ると、低★発掘として納得できる。
一方で、骨太ダークファンタジー部門では、拾われた作品の中に「素材はあるが本文実装が弱い」「暗い看板はあるが骨太ではない」「★が少ない理由が本文に出ている」ものが混じっていました。『ネクロマンサー』は死者の軍事利用という素材はあるが説明寄りで場面圧が弱い。
『魔王因子の落ちこぼれ』は暗い要素はあるものの、実質は魔王因子覚醒ざまぁ寄りに見える。
つまり問題は、低★を拾ったことではないです。
問題は、低★を拾ったあとに、
これは低★だけど本文は強い
これは低★相応に弱い
これはテーマに合っているが作品としては未成熟
これは商業化の種はあるが現稿品質は足りない
という仕分けが十分にされていないことです。
本来なら、選考委員の3枠は自由でいい。
ただし、その後に運営側か別審査で、
テーマ適性
本文完成度
読者導線
最低限の文章品質
公開戦闘力または短編完成度
をチェックする必要があります。
特に「次にくるテーマ」という看板を掲げるなら、単なる選考委員の好みでは足りません。
読者から見ると、選出作は「このテーマの代表例」として並びます。
だから、
選考委員が好きに3作選ぶ
だけなら企画としては面白い。
でも、
その3作がそのまま部門の顔になる
なら、品質担保が必要です。
今回の怖さは、そこです。
宿命の伴侶部門のように、ちゃんとテーマを読んでいる選考なら「なるほど」と思える。
でも骨太ダークファンタジー部門の一部を見ると、「これなら★数の方がまだ警告として機能しているのでは」と感じてしまう。
それは低★発掘企画としてかなり危険です。
低★を拾うなら、読者に、
これは見落としていた
★が少ないだけで、本文は確かに強い
選考委員の目がランキングを超えている
と思わせないといけない。
逆に、
★が少ない理由が分かる
テーマ代表としては弱い
選考委員の審美眼より★数の方が当たっている
と思われたら、企画の信用が崩れます。
なので結論はかなりはっきりしています。
3枠制はいい。
選考委員の個性を出すのもいい。
低★発掘もいい。
でも、最終的に並べる作品の質を担保する二段目の選考が足りない。
これです。