『パラダイム』全4話を読んでいただき、ありがとうございました。
まだ未読の方は、このあとがきは分かりにくいかもしれませんので、ぜひ本編を先にお読みください。
本作は「アオイ」という女性の“思考の枠組み”を描いた物語です。
アオイの考え方は、わがままで子供っぽく、他責的に見えるかもしれません。しかし、それは「誰もが心の奥で抱えている本音」でもあると思っています。
人には、少なくとも三層の思考があると私は考えます。
1.上辺を取り繕う“大人のフリ”の思考
2.良心や性格に基づく“社会的な思考”
3.外には出せない、根幹にある“本当の思考”
この②までを「自分の本音」だと思い込んでいる人は多いのではないでしょうか。
私の考えなので、賛同は求めません。
成長するうちに身につけた常識が、気づけば自分の中で「世間一般の意見」になっていることはありませんか?
『パラダイム』では、あえて③に焦点を当てました。そのため、アオイは自分勝手で子供っぽいように見えますが、同時に「正直に生きている人間」でもあります。
アオイには一つだけ確かな“軸”があります。物語の結末は、その軸を基準に収束します。
私が最後に込めた思いは──「叶わない夢こそが、人を生かす希望になることもある」ということです。
どんなに他責的でも、どんなに生きづらさを抱えていても、必死に夢を追っている限り、アオイの人生を「不幸」と決めつけてほしくない。そんな思いで、この物語を書きました。
暗い部分に触れる話が多いので、読むとしんどくなるかもしれません。どうか用法用量を守りつつ、パラダイムや他の作品も楽しんでいただけたら嬉しいです。