拙作『深緋の恵投』のあとがき的、製作秘話的、解説的なものを、書いてみようと思います。
※以下ネタバレ注意
☆『深緋の恵投』の製作過程について。
本作はプロットを書いておりません。
当然、長編小説で特にミステリーとするためには、物語の整合性が大事だと思われますので必須だと頭では思っておりますが、書こうと思って何回も挫折しました。
正確には書きかけたのですが、すぐにご都合主義的な展開だと分かってしまい、脱線してしまうのです。
結局諦めて、ポイントだけ決めて、どうしても入れたいシーンだけをメモするにとどめ、あとは成り行きに任せました。
最初は、血液をテーマにするとはこれっぽっちも構想にありませんでした。
起:「頭の良いヒロインの女子高校生が二重人格の男子高校生と遭遇」
承:「ヒロインが疾患への興味からその男子高校生のことを好きになり、友人の助けで結ばれる」
転:「女子高校生が悪い組織に誘拐されてしまい、男子高校生が助けに行く」
結:「助けに行こうとして男子高校生は瀕死の重傷を負うが、命が助かる代わりに交代人格を失う」
当初はたったこれだけの骨組みだけでした。物語の重要なテーマとなっている血液型についてはすべて後づけです。
なので、最初は「ミステリー」としてではなく、分類するならば「恋愛・ラブコメ」か「現代ドラマ」かのどちらかとして書き進めました。
しかし、男子高校生がどうやって助かったか、ということを考えたとき、輸血のアイディアが降ってきました。(以降のアイディアはすべて天啓が降ってきたのです。私の努力ではありません(笑))
でもただ輸血するだけでは面白くない。ここで輸血を困難にさせる想定について考えます。
そのとき、昔一度読んだ『焼きたて!!ジャぱん』という漫画に出てくるピエロ(?)が確か稀血だったと言うことを思い出しました。
そのときはそれが「Bombay型」だという名前だということさえ忘れていました。
そこで本格的にリサーチすると、
◆100万人に1人という血液型で、しかも同じBombay型の血液しか輸血できない。
◆しかもH抗体は自然抗体で、異型輸血は初回の輸血から溶血を来す。
◆常染色体劣性遺伝形式であり、親の血液を子供に輸血することも現実的にまず不可。
◆通常の血液型検査ではO型と判定されてしまうため、メンデル遺伝の法則に則らないことがある。
という、すごい血液型だということが分かりました。
どうせなら、その特殊性をすべて余すことなく、小説に取り入れようとしました。
そこで、当初「解離性同一性障害(多重人格)」だった主たるテーマを「献血」へと途中から軌道修正しました。
ゆえに、犯罪組織を、献血を悪用する集団にしようということを思い付いたのです。
どういう悪用の仕方にするのか。
最初はただ単に、血液製剤を病院に高く転売することを思い付いたのですが、どうもしっくり来ない。そこで若い血液はアンチエイジングに効果的である、ということを吹聴して悪銭を会員からもぎ取ることを考えました。
最初はデタラメで書いたのですが、何となく調べてみたら、なんと、若い血液は本当に身体を若返らせるそうです! 興味のある方は以下URL参照。
http://www.cnn.co.jp/fringe/35047481.htmlなお美容に効果はあるというのは作り話です。
ちなみに「世界一受けたい授業」というTV番組にも、このことはちょっとだけ取り上げられていました。
事件の発覚については、針刺し事故で起こるB型肝炎を思い付きました。
そこでヒロイン(優梨)の父の病院に患者が受診することで、何でB型肝炎の新規感染患者が集まってきたのか、それを解明させるように導くのが、ストーリー展開として成り立つのではと思いました。
そのときはじめて「ミステリー」というカテゴリーへの可能性に辿り着きました。
この作品の問題提起が、かなり遅いのはそのためです。
ただ、ミステリーについては伏線が重要になります。
このとき「Bombay型」も謎要素の一つにしようと思っていましたので、そのときに「聖飢魔Ⅱの曲目」や「猫の品種」をヒントにできるのではと考えつきました。
「聖飢魔Ⅱ」は交代人格の夕夜にカラオケで歌わせることを思い付きました。
あとは、どう伏線を張るのか。
血液型について、一つは序盤の瑛、優梨、風岡、陽花の合コン(?)で「血液型占い」の話題を持ち込むことで導入しました。
後の瑛の述懐で、血液型の謎が詳細に優梨に語られるようにしました。
そして最大の伏線として、この物語の最大のキーパーソン、供血者である黒木が、瑛のために献血をするシーンを序盤に持ってくることを思い付きました。
しかし、あからさまに献血をしていると書いてしまっては意味がない。いかに婉曲的な表現を駆使して、最初に読んだ時は意味不明だが、読了した後でようやく意味が分かる、という文章にするかが、大変でした。
黒木の出身地「宮崎県」は私の好きな県であるということで、そう設定したのですが、宮崎でよく見かける「フェニックス」という木が不死鳥と同じ名前であることは、あとで思い付きました。
金城埠頭に向かう並木がフェニックス(実際に車で走ってみたらそうだった)であることから、瑛がデジャブを感じるところも、あとになって得たアイディアです。
実は、宮崎を髣髴とさせるキーワードはところどころあります(笑)。
直接的にはフェニックス並木、クロキ(宮崎県でいちばん多い苗字は「黒木」姓)。
あとはおまけでスタバのマンゴーフラペチーノを入れてみたり、私のペンネーム「銀鏡(しろみ)」は宮崎県の地名であったり……
話が前後しますが、序章を婉曲的に表現しようと考えているときに「深緋」という和色のキーワードを思い付きました。
調べるうちに、歴史的な高貴な色だということが分かり、ついにこれが小説のタイトルへと抜擢されます。
ただの「緋色」にしなかったのは理由があります。
静脈血は暗い赤、動脈血は明るい赤です。
献血は静脈から採取しますので、濃淡をつけるため「深緋」と「浅緋」と対になる表現としたのです。
そのとき、冒頭を「深緋」とするなら、エンディングを「浅緋」にしようと思い付き、夕焼けのシーンでヒロインとヒーローが接吻すれば、お後がよろしいのではと思いました。
長くなりましたが、大まかな製作の流れはこんな感じです。
小説は初執筆でどうなるか分かりませんでしたが、書いてみたら19万文字の浩瀚な作品になってしまいました。執筆期間2ヶ月半。
とにかく読むと書くでは雲泥の差で、とても労力を使いましたが、度重なって舞い降りてきた「天啓」に支えられた作品です。
ちなみに、先日の近況ノートでも述べたとおり、次回作のアイディアは、まったくと言っていいほど「天啓」は降りてこないので、とても苦労しております。
しかも相変わらず、プロットは書いていなくて、必要なことだけをチラシの裏に書いている程度なので、完成度はかなり落ちるでしょう。
何とか、WEB上に上梓できるところまで、頑張りたいと思いますが、これからも気長によろしくお付き合い頂ければと思います。