(前回の続き)
最終話の敵デッキ【野災】を解説します。
こちらはイメージとしては「お兄がこれまで使っていたスターターデッキ(種族:ベジタリアンがテーマ)に、ベジタリアンのサポートになる【野災】テーマを入れることで実戦級のデッキにした」というイメージです。
カゲ妹もタッチ闇をしつつ同じデッキを使ったのは、すでに読者に説明済みのテーマであるため解説を省略できるというのと、ミラーマッチでデッキパワーが拮抗しているためにこれまでとは違い対等な戦いとなっている――という演出をしやすいためです。
デッキの動かし方としては地エナジーをブーストしていきながら展開していくという流れで、ちょうどデュエルマスターズの最新弾で強化されたばかりの【キャベッジ軸グランセクト】に近いイメージですね。
テーマが野菜なのは元ネタのキーカードがキャベツをモチーフにしていることに加えて、筆者である私が最近夏野菜を使った料理に凝っているためモデルを引き出しやすいというメリットがあったためです。
では、各カードの解説をしていきましょう。
《放浪《ノマド》マンチキン》
カゲ妹のデッキのキーカードです。
ログイン・ボーナスで基本エナジーである《菜園》をブーストして加速しつつ、なんらかの条件で《菜園》をリロールできるというソリティア御用達のカードです。許されていいわけがない。
こちらは【野災】のテーマ外ですが、種族がベジタリアンであるためサポートを共有できるという理由でカゲ妹は採用したみたいですね。
カード名の元ネタは『オズの魔法使い』に登場する小人族マンチキンに由来しますが、このマンチキンはアナログゲームの用語で「困ったプレイヤー」を意味する俗語でもあります。タイトルの「マンチキン採用」という言葉で、カゲ妹を連想した読者の方も多かったのではないでしょうか?
《魔を断つエスカリバーダ》
ベジタリアン専用の手札誘発です。
作中の描写によると、コストとしてベジタリアンを墓地に送る必要があるようですが、これが後の展開に繋がります。
《瞬足《しゅんそく》の野災《ディザスター》キャロット》
【野災】カードの一種です。元ネタはニンジン。
ニンジンが「駿足」なのは、馬の好物だからです。
墓地起動効果で【野災】を展開することができるようで、カゲ妹のセリフから推測すると「互いのプレイヤーを通して一度しか使えない」タイプの効果のようです。
カゲ妹はお兄の性格を読んで、お兄が自分のプライドにかけて必ず先攻を渡してくるはず……というところまで読んでミラーマッチに持ち込んだようですね。卑劣だ。
《剛力《ごうりき》の野災《ディザスター》スピナッチ》
【野災】カードの一種です。元ネタはほうれん草。
ほうれん草が「剛力」なのはポパイの好物だからです。
軽量スペルを踏み倒す効果を持っていたようですね。
《大収穫祭》
デッキの上からエナジー以外のカードを4枚公開して、ベジタリアン関連のカードを全て手札に加えるカードです。
モチーフとなってるのはデュエル・マスターズに存在するテーマデッキ専用の大量ドローカードであり、【グランセクト】では《ジャンボ・ラパダイス》、【巨大天門】では《巨大設計図》、【アポロ(バイク)】では《進化設計図》が該当しますね。
カゲ妹が「ハンデスは《大収穫祭》の濁りになる」と言っていたのは、このカードでめくれた場合にはドローできる枚数が減るためでしょう。
そこまでして闇エナジーのハンデスを採用した理由は、作中では「ズッキーニから唱えられるから相性良いし、ルバーブも採用できるようになる」と語っています。
このことから、ズッキーニは軽量カードをサーチしたり踏み倒したりする効果、ルバーブは相手の手札が墓地に落ちることで何らかの強力なシナジーがある【野災】だと推測できます。
ズッキーニの方は、パプリカと並べて「先置きされたら《護法童子》がゴミになる」とカゲ妹が語っているので、何らかの妨害メタとなる効果を積んでいる可能性もあります。
それか、ズッキーニの効果経由で唱えたカードは妨害しづらい、とかでしょうか?
《|盛夏の黙示録祭《ホット・サマー・アポカリプス》》
【野災】の切り札となるカードのようです。
作中のセリフから推測すると、踏み倒せない代わりに妨害が通用しないエンドカードのようですね。
ネーミングの元ネタは『岸部露伴は動かない』に登場するホット・サマー・マーサと、笠井潔の矢吹駆シリーズ第二作『サマー・アポカリプス』のかばん語です。
当初は単に《サマー・アポカリプス》としていて、夏野菜たちの起こすイベントとして良いネーミングだな……と思っていたのですが、どっかで使われてなかったけ?と気づき、検索して元ネタを思い出しました。
《絶氷《ぜっひょう》の野災《ディザスター》フィコイド・グラシアル》
【野災】カードの一種です。元ネタはアイスプラント。
「絶氷」の由来は、アイスプラントの葉には氷のような塩の結晶が生まれる特性があるためです。
当初は単にアイスプラントだったのですが、字面がアボカド・ジュニアと並んでうるさかったのでフランス語のフィコイド・グラシアルにしました。響きの良いネーミングになって好き。
リサイクルというキーワード能力により、自身をコストにしてウォーターメロンをサーチする効果を持っていたようですね。
これはMTGに登場する「サイクリング」という能力をモデルにして設定しています。
《覇道《はどう》の大野災《カラミティ》ウォーターメロン》
【野災】カードの一種です。元ネタはスイカ。
他とは異なり、ディザスターではなくカラミティという名称になっています。
自身をゼロ・カウント・ディビジョンで踏み倒す条件が「ディザスター・ベジタリアン3枚を手札から公開すること」なので、このアバター自身は「カラミティ・ベジタリアン」であり公開することは出来ないのかもしれません。
自身も公開できたらコスト軽すぎますしね。
カゲ妹のセリフによると、テンプレ構築では使われない代わりに、地上戦を封殺するので、ビートダウンを狙う型を意識したミラーマッチでは有効なカードのようです。
ログイン・ボーナスで基本エナジーを2枚引っ張ってくるので、ここで《荒地》を出したことで次ターンにハンデスが発動します。
《落胤《らくいん》の野災《ディザスター》アボカド・ジュニア》
【野災】カードの一種です。元ネタはアボカド。
こちらは響きだけで決めたカード名で、カード名にジュニアを付けたので異名は「落胤」になりました。
遊戯王OCGの人気カード《アルバスの落胤》をイメージさせるということで、読者サービス……なのか?
効果自体は合ってもなくてもいいものですが、これは「今回はカゲ妹も一方的な制圧には失敗しており、展開した盤面には満足できていない」ということを印象付ける役割を与えました。
《トマト爆弾》
不発に終わった、お兄のまくり札です。
話の流れからして、ウォーターメロンに対する唯一の有効札だったと思われます。
不発には終わりましたが、これをハンデスしたときのカゲ妹が遊んでいたのは「一方的なソリティア展開」ではなく「対戦相手との読み合いを制するカードゲーム」になっていましたね。
《|突然の不幸《サプライズ・アンフェア》》
第一話の【マーセナル】でも使われていたハンデスです。
同じカードでも、撃ったときの二人のやり取りは、だいぶ変わったものになっていたのではないでしょうか?
以上で、カード解説を終わります。
あらためて、ご愛読ありがとうございました!
今後とも、秋野てくとの作品をよろしくお願いします!