どうもあおぞらです。
タイトル通り来週上がるかもしれない新作の先行投稿です。
新作のタイトルは『戦闘センス持ちが鬼畜魔法学園で身体強化を覚えた結果、ヤバい美少女達に懐かれた』です。
それでは第一話をどうぞ。
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「——なんだぁ、ここが学園か? 流石にデカすぎんだろ。もう城じゃん、最上階で王様踏ん反り返ってそうな外観じゃん」
西洋の綺羅びやかな城にしか見えない学園を見上げて顔を顰める。
生粋の庶民たる俺——アレシオンは、昔からこういった住む世界の違う場所は苦手なのだ。らくがきしたくなるから。
「つーか言われた通り来たはいいが……これからどうすりゃいいんだ?」
普通なら手紙とかで案内されるはずだ。
しかしながら、学園長から直に渡された手紙には学園に辿り着いてからのことが一切書かれていなかった。
「くそっ、説明が少なすぎんだよ。直ぐ説明すりゃあいいのに、わざわざ『あとで説明する』とかほざくホラーゲームかってんだ」
ホラーと言えば、俺をこの学園にスカウトした学園長だ。
『君には特別な才能がある。——ウチの学園に来ないか?』
なんて出会って数秒で言われたのだ、怖くないわけがない。
まぁそんな胡散臭い誘いに乗ってしまった自分の判断も十分にホラーだが。
「特別な才能、ねぇ……」
自覚がないわけじゃない。
寧ろ自身の才能には大分前から気付いていた。
その才能——戦闘センスに気付いたのは、転生前の日本での一件。
当時高校生だった俺は、原因こそ忘れてしまったが……友達と取っ組み合いの喧嘩をした。
しかしその友達には格闘技経験があり、碌に身体も鍛えてない俺に勝ち目なんてない——はずだった。
いざ喧嘩が終われば——俺は無傷で、友達は頬を真っ赤に腫らしていた。
彼の頬が赤くなったのは、俺が殴ったからだ。
何もしていない貧弱な俺が、格闘技経験のある友達を、である。
あの時の衝撃は今でも覚えている。
まるで手に取るように分かったのだ。
友達の拳が。
友達の動きが。
それだけじゃない。
次に自分がどう動けばいいのか——それすらも。
初めての感覚だった。
相手が動く少し前に相手の身体がブレて見えたかと思えば、直ぐにピッタリとそのブレに相手の身体がハマる……そんな感覚。
まぁ幾らどう動けばいいか分かってても、軟弱な俺の身体は言うことを聞いてくれなかったが。
兎に角、これが——俺が自身の才に気付くキッカケだった。
そして自身に才能があるなら、是非とも活用したくなるのが人間だ。
俺だって例に漏れずこの才能は活かしたいと思った。
だが——俺は思い知らされた。
戦闘センスなんざこの異世界では全くの無意味だと。
なぜなら——この世界の戦闘は魔法が主流だから。
そして魔法を使う者——所謂『魔法使い』と呼ばれる奴らは、どいつもこいつもバケモノばかりだった。
遠距離から一発で人間数人を消し飛ばせる威力のモノを放ったと思えば、息するような感覚で《身体強化》を使ってきやがる。
因みに《身体強化》を使えば、どんなヒョロガリだろうが素手で鋼鉄を砕け、百五十キロを越えた巨漢だろうとチーターと同等以上の速度で走れる。
もちろん鍛えてないと肉体の負荷は凄いことになるし、練度で上がり幅も変わってくるが……それを加味してもとんでも性能だ。
そんなバケモノ共相手に戦闘センスだけでどう対抗しろというのか。
魔法を習得しようにも独学での習得はほぼ不可能。余程の才能があれば話は別なんだろうが……生憎俺に魔法の才はない。
そうなると魔法学園に行ったり魔法使いに弟子入りしたりするのが定石だが……。
魔法学園は金が絶望的に足りねーし、魔法使いの知り合いも絶望的にいねーよ。
つまり詰みだ。
もはや諦める以外に道はない、そう思っていた矢先——あの爺さんが現れて勧誘を受けたというわけだ。
爺さんが言うには結果さえ残せば卒業までタダでいいとのこと。
また、入学試験の代わりになる何かしらのテストをクリアしたらしいが……俺には一切記憶がない。
「やっぱり騙されたのか……?」
「——騙してなどおらん。君にはしっかり勉学に励んでもらうつもりじゃ。——このヘルメトス魔法学園での」
なんて聞こえてきたと同時——周りの景色が変わる。
バカでかい学園の校門からこじんまりとした個室へと、さながら映画のセットのように。
まぁ実際はそんな単純なモノじゃない。
「あのさ、いきなり転移はやめてって何度も言ってるよね? 遂にボケたかジジイ」
「はっはっはっ、私のボケは天下一じゃぞ?」
「おいおい……幾ら残りの人生が短いからっていきなりボケるのはやめてくれっての」
「それはすまんことをした。私は君みたいに浪費出来る時間がないんでの」
さながら悪ガキの如くケラケラ笑う老人。
何を隠そう、この口髭を蓄えた中身クソガキの老人こそ——俺をスカウトした学園長である。
「はぁ……んで、ここは何? 無料でこの部屋に住ませてくれんの?」
「そうじゃ」
「……マジ? そりゃあ俺としてはめちゃくちゃありがたいけど……ワンクリック詐欺みてーにやっぱり金払えとか言わない?」
「安心せい、そんなことは言わんよ」
笑いながら爺さんが髭をさする。
この爺さんの言葉はイマイチ信用出来ないんだが……まぁ追い出されたら追い出された時だ、未来の俺がなんとかするだろう。
そう未来に期待しつつゆっくり荷解きする俺だったが——次の爺さんの言葉で状況が一変する。
「——何をゆっくりしておる、さっさと荷物を置かんか。あと十分で入学式じゃぞ?」
…………。
「ふ、ふざけんじゃねーよクソジジイ! そういうことはさぁ、先に言っといてくれないと困るんですけどぉ!?」
「はっはっはっ、良かったではないかアレシオンよ。これで年寄りの一日を体験出来るぞ?」
「やりたくねーよそんなもん! 俺は根っからののんびり屋なんですぅー! 屋久杉の根っこくらいぶっとい性根なんですぅー!!」
心底楽しそうに笑う爺さんを文句と共に睨み付けながら、俺は部屋から飛び出した。
——この時の俺は知らない。
——このヘルメトス魔法学園が超絶鬼畜な実力主義な学園だということ。
——前期と後期にそれぞれ一定の順位を取らなければ退学になってしまうこと。
——そんな学園でも一目置かれるヤバい美少女達に目を付けられてしまうこと。
「——あーもう疲れたんですけど! どうせ間に合いそうにねーしよぉ……この際どっかで寝てていいかな? いやでも、流石に初日から遅刻はやべーよなぁ……」
入学式をバックレようとする舐め腐った俺には、当たり前のように知る由もないのだった。