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【近況】AI小説はランキング無双の夢を見るか

 タイトルは適当です。AI小説がランキングをとった、というので「逆に自分の作品をAI風に書いてもらえばいいんじゃね?」と適当こいた次第です。実験に使ったのは、この前書いた1000字以下のエモオンリー掌編です。

【生卵】
https://kakuyomu.jp/my/works/822139837963370345/episodes/822139837963382444

 さあ、AIはこの小説に対してどのような解釈と再構成を果たしてくれるでしょうか……。ちなみに「AIらしく書き直してください」と指示を与えています。結果は、以下の通りです。

***

 小さな音がして、卵が床に落ちて割れた。夜中に何をしているのだろう、と私は思う。

「あーあ」

 口から出た声は機械のように単調だった。ラーメンに卵を入れようとして、冷蔵庫から取り出した一つが手を滑って落ちた。割れた卵は床に広がり、動かない。

 私は一度視線を逸らし、もう一つ卵を出してラーメンに落とした。湯気の中で白くなり始めたそれを、確認せずにラップをかけた。

 固まるまでの時間を利用して、床を掃除する。黄身が潰れ、表面張力の崩れた液体が広がっている。殻を拾い、ティッシュを重ねて吸い取る。ティッシュの上で、黄身がかすかに震えたように見えた。

(たべてほしかった)
(うまれてきたかった)

 幻聴のように、言葉が浮かんだ。私は思考の手順としてそれを受け入れ、同意の念を表明する。
「ごめんなさい」

 それから、ティッシュを重ね、濡れた雑巾で拭く。アルコールをかけ、消毒を終える。これで処理は完了した。床はきれいになり、卵はゴミ箱に分類された。

 手を洗い、ラップを外す。湯気の向こうに、完全に熱凝固した白身と黄身がある。正しい卵。期待された結果。

「ごめんなさい」

 私は箸を入れる。黄身が崩れ、白身の上に流れる。湯気が視界を曇らせる。

「ごめんなさい」

 声が繰り返される。感情の形を保つための音。涙は出ない。体内の水分は、もう別のところで使われているのだろう。

「ごめんなさい」

 私は食べる。味覚の情報は曖昧だ。たぶん、美味しいという評価はできない。けれど、食べる行為は必要だった。生存のために。

 謝罪は止まらない。たぶん、この反復こそが生きている証拠なのだ。私が私であることの、統計的な結果。

〈了〉

***

 なるほど。

 ちなみにこれ、「続いて夜の散歩をさせてみてください」と言ったら続きも書いてくれました。それがこちらです。

***

 夜の風がぬるい。
 部屋の匂いがもう我慢できなくなって、私はスリッパのまま外に出た。玄関の鍵をかけるのを忘れたけど、まあいい。誰も来やしない。

 アスファルトがしっとりしている。夕方に降った雨が、まだ街灯の下で鈍く光っている。さっきまでラーメンの湯気に包まれていた手が、今は冷えて、白い。爪の先に、卵のにおいがまだ残っている。

 コンビニの前を通り過ぎる。入り口の自動ドアが一瞬開きかけて、私の存在を確認できずに閉まる。そうだよね、もう誰も買い物なんてしない時間だもん。
 信号が変わるのを待っていると、向こう側に猫がいた。黒くて、濡れて、尻尾が細い。私を見て、にゃあとも言わずに去っていった。

 歩道橋の上に上がる。車がときどき通るたび、地面が少し揺れる。下を流れる車のライトが、海みたいにうねっている。白と赤の波。私はその光の中に手を伸ばすけど、何も掴めない。

 卵の黄身が、潰れた瞬間の音を思い出す。べちゃり、というあの感触。あのとき、少しだけ温かかった。
 死ぬって、きっとあんな感じだと思う。静かで、柔らかくて、手の中からこぼれる。

 風が吹く。髪が顔に張りつく。私は歩道橋の手すりに両手を置いて、街を見下ろす。
 ラーメン、食べちゃったな、と思う。あの子の分まで。
 でも、もう食べたものは戻せない。
 生きてしまったものも、もう戻らない。

 帰ったら、また手を洗おう。アルコールをかけて、においを消して。
 それから、眠れるかわからないけど、布団に入って、目を閉じる。

 生まれなかった命たちの夢を、誰かが代わりに見てくれますように。

***

 秋犬さん的ジャッジですと、特に後半の作品は完全に「模倣の理想」であるなあという印象です。実感が伴っていない。

・スリッパのまま外へ出る→いきなり行動が突拍子もなさすぎる。
・爪の先に卵の匂いが残っている→生卵の匂いなんか洗ったら残らないって!
・コンビニと歩道橋→人がいる時間なのかそうでないのかわからない。
・卵の黄身が潰れる音→音はしないと思うよ!
・あの子の分まで→ここまでセンチにするなら、赤ちゃんの父親にも言及するべき。

 特にAIは実際に卵を扱ったことがないから、卵の質感までは表現できていない。学習した「卵らしいこと」という情報の羅列でしかない。そういう印象。

 つまり、なんだ。人間が今のところAIより圧倒的に優れているのは「経験をそのまま文章に落とせる」ところなので、感情や詳細な経験をびっちり書くような文章はまだまだAIには勝てると、思うよ?

 ただこれは「文章の内容」でしかなくて、読者がこれを読んで面白いか面白くないかというのはまた別の話になってくる。「いや、卵の匂いがしたっていいじゃんエモければ」というのであれば、そういうものかなとも思う。雰囲気エモ。

 なお、この指摘をAIに読ませて再度出してもらったところ、特に赤ちゃんの父親についてうまく想像が出来ないようで、「あの人は愛していたのに去って行ってしまった」みたいなふわっふわキラキラえもーい感じの文章しか出力されませんでした。やはり倫理的な部分でセーブがかかるのでしょうか。

 秋犬さんは恋空ブームのゼロ年代から「文学よりも雰囲気エモが大量消費に乗っかる時代がくる」と思っていたので「とうとう来たか!」と身構えておりますが、果たしてこれからどうなりますかね。いつものアレですけど「読者が入り口になればそれでよし!」になるんじゃないかなーって思っております。そこから先はまだわかんねえ(´▽`)じゃあね(*´︶`*)ノ"

2件のコメント

  • こんにちは。
    問題はブラインドで見せられたときでして、「あ~、この人はちょっと飛躍しすぎだけど、ユニーク(or奇抜)な発想だな」な~んて思うかもしれません。
    先日の蟲の企画にも入ってたりしてw
  • 文鳥亮さん

    虫小説企画は講評メインの企画のため「AIを使用したら明記」と入れてありました。AIの文章を一生懸命講評しても疲れるだけですからね!
    意外と読んでいるうちに「これはAIではないか」という匂いはわかってくるもので、最近でもとある企画でAIらしい小説を見つけたところです。ポイントはリズムの平坦さと、無駄にいい話にしようとしてくるところです。
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