読み専の皆さま、フォロワーの皆さま。いつも拙作をご覧くださり、本当にありがとうございます。
本日は、拙作「青い疾風!」シリーズの主人公、ヒースの誕生日にあたります。
現在、絶賛クライマックス中ではございますが、本来なら以下のような誕生日会が行われていたかもしれません。
ということで、珍しくSSを作ってみました。
場合によってはネタバレになるかもしれませんが、もしよろしければどうぞ・・・。
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その日、ヒースは護衛隊駐屯所の隊長会議でヘロヘロになるまで絞られていた。
「ったくよぉ。クロードのやつ、会議は長ぇし、俺の〝せきそく〟をイチイチ細かく聞きやがる」
「ヒース、それ〝足跡〟ね、そくせき!」
ジェシカが腰に手をあててツッコミを入れた。
「母ちゃんか!」
「あたしがいつあんたの母ちゃんになったのよ!」
「違ぇ! 俺はクロードのことを言ったんだ!」
そんな話をしながら、帰路につく。
もうすっかり空は夕暮れの色に包まれている。
馬車の御者台で話をしているうちに到着だ。
アバロン——。
ここはヒースにとって、初めての親友となったミツヤが独りで済んでいた廃墟をリフォームした6人の住居がある街だ。
街といっても、数年前に異形獣(まもの)に滅ぼされ、猫の子一匹住んでいない土地であるため、ここを訪れるのはこの6人しかいない。
当時、裕福な者たちであふれていた街も、瓦礫と化していたが、このシティーホールだけは無事だった。
「ただいま!」
玄関の重厚なドアを開けると、大広間がある。1階の2つの部屋は男部屋に、女子部屋は2階にあつらえている。
幅広の階段はカーブを描きながら2階に繋がっている。
「ジェシー、誰もいねぇみたいだぜ?」
いつもなら、吊り下げ型のロウソク台、壁のブラケットなど至る所に灯りがともっているはず。それがところどころ消えて、薄暗くなっていた。
「変ね。まだ夕方の6時前よ。寝てるわけないし」
そう言いながら、ジェシカは暗がりでニヤニヤしている。ヒースは向かって右側にある男子部屋——ミツヤと2人で使っている部屋のドアをそっと開けた。
「ミッチーもいねぇか」
反対側の男子部屋、アラミスとドクが使う部屋はドアが開きっぱなしで気配はない。
「…………ジェシー、ちょっと下がってろ」
ヒースはがらんとしたホールに物音ひとつしない様子に腰を落とし、炎斬刀の柄に手を掛けた。目だけを左右くまなく動かす。
その時だった。
「――今だッ!!」
パンッ! パンパンパンッ!!
突然、大量のクラッカーが炸裂。
「誕生日おめでとう――っ!!」
「うおおおおっ!?」
ヒースは完全に敵襲と勘違いしたまま反射的に前へ跳び、炎斬刀を抜き放つ。
「誰だ! 姿を現せ——っ!!」
「違う違う違う違う!!」
と、2階から階段の手すり越しに下を覗くミツヤ。全員の手にはルエンドが火薬を調合した手作りクラッカーから紙テープが飛び出している。紙吹雪がホール中を舞った。
「あ——」
ようやく状況を理解したヒースは、刀を持ったまま固まる。そこへ紙吹雪まみれになったドクが苦笑いしながら階段を降りてきた。
「ふう、危うく主役に斬られるところだったよ」
続いて降りてきたアラミスはテキパキと部屋中の灯りを付け始める。
「だから俺はヒース相手にサプライズ止めようっつったんだ」
そこへルエンドが後ろに手を組んで勿体ぶった風に切り出す。
「ヒース、ね、何か匂わない?」
「……そういや懐かしい——あ、この匂い!」
すると奥の厨房から六三郎が大きな鉄板を抱えて現れる。
「主役は腹ペコだと思ってな。今日は特製だ」
「六ジイじゃねぇか! いつこっちに?」
「2時間ほど前じゃ。いや、六さんと呼べと言っとるじゃろうが」
鉄板いっぱいに広がる巨大なお好み焼き。それはヒースとミツヤの大好物、香ばしく炒めたそばがぎっしり詰まったそば入りだった。
「うおおおおおっ!! 六ジイ! 神いぃぃぃッ!!」
ホール中央にテーブルを用意し、熱々の鉄板を置ける木の板を敷くと小さなロウソクを巨大なお好み焼きの周辺に17本立てた。
「さて、ヒース。お前も17じゃのう。全部消せるか?」
「ちょろいぜ」
ヒースは大きく息を吸い込むと、ふ——っと端から順に火が消えるよう息を吹きかける。みんなの拍手で誕生日パーティの始まりだ。
「早く食べようぜ!!」
待ちきれないヒースが身を乗り出す。
「よし、ヒース、お好み焼き入刀だ」
「任せろ!」
ミツヤに促されると、ヒースは当たり前のように勢いよく炎斬刀を抜いた。
シャキンッ!
「ちょっと待てぇぇぇ!!」
勢いよく手を伸ばすアラミス。
「誰が刀で切れっつったァ!?」
「なんだよ。俺の腕を信用してねぇのか?」
「腕じゃねぇ! 衛生面だ! ヘラあるだろ、ヘラ!」
と、鉄板の横を指差す。
「そういやヒース、炎斬刀、手入れしとるのか?」
隣に立つ六三郎は思い出したように問いただす。
「毎日拭いてるぞ」
「待って2人とも。論点はそこでいいの!?」
と、今度はルエンドが身を乗り出す。どうしても気になることがある。
「その刀、最後に何斬った?」
「トカゲ型の異形獣、タイプ3」
「その前は?」
「蜘蛛型のタイプ5」
「その前ッ!」
「……ターミナいてぇ! 何すんだ!」
「女子の前で食事前に出す名前じゃねぇだろ!」
「待って、今サラっと怖い名前だそうとしてなかった?」
ジェシカが青ざめた顔で指摘すると、ルエンドはお好み焼きの端へ指を差す。
「……今、ここちょっと切ったわよね!?」
「あ」
ヒースも刀とお好み焼きを見比べる。
「でもちゃんと|異形獣《まもの》は生きたまま本部へ届けたぜ!」
「今聞いてるのそこじゃないからぁぁぁ!!」
ジェシカとルエンドのツッコミが見事に重なった。
——こうして、ヒースの誕生日会は始まったのだった。
おしまい!
失礼いたしました!
今後ともヒースと仲間たちをよろしくお願いいたします!!