「──それでは、まずは自己紹介からいきましょうかね。いいですか? 陛下」
「……面倒だから俺のことも紹介しろ」
「何言ってるんですか。それくらいちゃんとやってくださいよ。──ああ、すみません。では僕の話をしますね」
『よろしくお願いします』
「すでにご存知だとは思いますが、僕の名はエヴァン・セネリオ。首都ソルビスタから東南にある領を治めている、セネリオ伯爵家の長男です。この国の宰相です!」
『エヴァン様は皇帝陛下と幼馴染だそうですね。どのような出逢いだったのですか?』
「運命の出逢いでした」
「何が運命だ。ただの偶然だろう」
「偶然だなんて酷いですねぇ。……ま、いいや。ええと、私の祖父──セデン・セネリオは、先代の宰相でしてね。ある日祖父が王宮を歩いていた時、傷だらけの少年を見つけたのです。それが陛下でした」
『ほ、ほう……』
「祖父が少年──陛下を執務室まで連れ帰り、手当てをして、美味しい紅茶を淹れて菓子を食べさせました。そこには僕も居ましてね。それから顔を合わせるたびに三人でお茶をしていたのですよ」
『つまりお茶友達から始まったというわけなのですね』
「ええ、そうです!」
「何が友達だ。無理矢理だっただろう、あれは」
「ご、ごほん──えー、それでは陛下のご紹介に移りたいと思います。隣をご覧ください」
『は、はい。よろしくお願いします』
「こちらの麗しいこの方こそ、我が国の皇帝陛下──ヴィルジール・フォン・セオドア・オヴリヴィオ様です。本当はもっと長い名前なのですが、ここまで覚えて頂ければ試験は合格できます」
「何の試験だ」
「年齢は27歳、身長は181cm。趣味、特になし。特技、特になし。好きな色、特になし。好きな食べ物、ワインと美味しいお肉。と、書かれていますが……」
「勝手に書いたのは誰だ」
「趣味はおそらく夜の散歩だと思います。夜の静かな庭園や湖のほとりなど、よく歩かれていますからね。自然がお好きだと思いますよ。特技は……巷で噂のぱわーはらすめんとでしょうか。すぐに怒るしすぐに刃物を出すし、すぐにクビだって宣告してきます!」
「……………」
「好きな色はないと思います。自分で着る服すらまともに選べない方なので。でも、ルーチェ様のドレスを選ぶセンスだけは素晴らしいですね。ばっちぐーってやつです」
「…………エヴァン」
「へへっ。……こんな感じですかね。何か質問はありますか?記者さん」
『ええと……では、皇帝陛下。皇后陛下の好きなところを教えてください』
「……笑った顔と、物を食べている時の顔と、怒った顔だ」
「ちょっと陛下、顔しか言ってないじゃないですか。そういうのは、もっとこう……」
「事実を述べたんだが」
『では、皇后陛下と決めた日々の約束事などはありますか?』
「朝食は必ず共にする。夜は同じベッドで眠る。あとは……七日に一度は一緒に風呂に入っている」
『…………ご、ご馳走様でした』