戦前に大和欠史八代に言及していたのは、歴史学者や歴史家ですらない菊池寛著作の『二千六百年史抄』の以下の記述でした。
「(前略)神武天皇より開化天皇に至る迄の御九代の間は、大和やまと地方御経営の時代で、東は皇室に御縁故深き伊勢地方、西は播磨はりまあたり迄、北は敦賀つるが地方あたりまでが、追々皇化に浴して来たが、他の地方にはなほ多くの土豪が割拠してゐたのである」(注)
筆者は菊池寛自身が歴史家という評価があったならば上記の大和欠史八代に関する記述を、真っ先に引用できるのに、と思わざるをえませんでした。それほどまでに菊池寛の大和欠史八代に関する記述がまさに「的確」なのです。
(注)……菊池寛『二千六百年史抄』同盟通信社一九四〇(昭和十五)年。引用は『菊池寛全集 第十八卷』高松市菊池寛記念館一九九五(平成七)年、二六八頁