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632話挿絵。マエストロ

 マーガレット近くに来て、やっと見知った者だと気付いた。
 彼は変わった扇子を持っている。
 よく一緒に遊び、彼については飄々爺だという印象があったので、こういう趣味が老人らしいなと思った。
 取り敢えずいつも通りに明るく挨拶をしようかと、笑顔を作った。

──あ、こんにちは

 そう言おうとした時の事。
 マーガレットの背筋を形容しようも無い寒気が襲う。
 マエストロの何時もと違う微妙な表情の変化だろうか。
 微かに重心の置き方がおかしな立ち方だろうか。
 それとも扇子の微妙な硬さだろうか。
 どうにもマーガレットにはそれらが『偽物』に思えて仕方が無かったのだ。

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