前回の投稿から大分間が開きまして申し訳ない……。
今回はモブというか本編に絡まないキャラクター達視点の話です。
ちょっと現在執筆中の3章に関係する情報も。
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ここは何処かの暗い会議室。
そこには全国の裏社会の頭領達が一同に介している。
「今回皆さんに集まってもらったのは他でも無い。我が『東影会』の、千擁四郎への不可侵条約についてだ」
代表して告げるのはくたびれた雰囲気の黒髪黒目黒スーツそして黒いお面の男。
彼こそ関東一円の裏組織を纏める一大組織「東影会《とうえいかい》」の会長、剣崎《けんざき》その人だ。
個人の力が、組織全体すら超える程の圧倒的になりかねない現代ダンジョン世界。
裏社会では組織の壊滅を防ぐため、時折このように「絶対に手を出してはいけない人間」が選ばれ共有される。
「……!」
参加者達の反応は様々だが、ほとんど「やっぱりな」と顔に浮かべていた。
「……それぞれ理由を挙げよう」
「ここからは会長秘書である私が代わって説明をしましょう」
秘書風の女性が一歩前に出て、ホログラムを起動する。
画像と動画を混じえた説明が始まった。
「一つは言うまでもなく千擁本人の実力。灰風会壊滅に始まり、先日の『亡者の行進』での活躍……根拠としては充分ですね」
あの灰風会をなぎ倒す闇サイトの動画や、テレビの報道映像が流れる。
「二つ目は彼の人脈。快晴に所属を決めたうえに、特級の雲上とは個人的な繋がりも有る。奴に手を出せばそれだけ多くの敵を生む」
雲上や神谷など、関係者の写真が映される。
「三つ目は彼の性格。一言で表すなら『克己復礼』欲望や誘惑に相当強い。我々の独自調査によれば雲上の誘いは何度も躱しているし、住まいを見るに金銭的な執着も薄い。しかもやると決めたら徹底的にやる、それこそ組織が潰れるまで。オマケに天涯孤独で脅迫にも屈しない、むしろ奮起する。……つまり我々がもっとも苦手とする人種なのです」
ここまで説明されると、会場の99%は納得を示していた。
秘書が一礼して下がり、剣崎会長が口を開く。
「……以上だ。千擁四郎には物理的にも間接的にも手を出すな。もし、何らかの理由で奴と事を構えたとしても何の支援は無いし、報復も無しだ」
「では今回の結論……異論は無いな?」
「「「はい」」」
「四元組は……どうだ?」
四元組。最近滅んだ灰風会の親組織に当たる二次団体である。
今回の「報復もしない」という決定に異論が出るとすればここだろうと、誰もが睨んでいた。
「……いえ、異論はありません」
「そうか。ならば今日は解散だ。各々やるべき事をやってくれ」
*
「お疲れ様です。剣崎会長」
会長室に戻った剣崎会長は秘書風の女性に話しかけられる。
「……ありがとう。……今回は面倒が出なくて助かった」
「ええ、まあ千擁が馬鹿でも分かる強さでしたからね」
「……そういうことだ。……っと、そうだ。アフターケアを忘れちゃいけない」
「はい、四元組長には既に呼び出しの命令をしています」
「……部下が優秀で助かる」
ちょうど良いタイミングで扉がノックされた。
「入れ」
「何用でしょうか、会長」
四元組組長が現れる。
「……お前には今回、苦渋の決断をさせてしまった。それに、灰風会の一件でお前の所の格も下がってしまった」
「いえ。会長のご決断とあらば何も言う事は有りません。看板の件については……恥ずかしながら仰る通りで」
そう言いつつ、四元組長は眉一つ動かさなかった。
彼にとって、灰風会についてはどうでもいいのかもしれない。
「……忠誠の褒美だ、挽回のチャンスをやろう。今度関西の奴らと戦争する時はお前達が一番手だ。灰風会が抜けた穴の分も埋まるよう手配してやる」
「勿体ない程の寛大さ、感謝いたします」
「……なに。灰風会一つで千擁の本気を知れたんだ……彼らの尊い犠牲には感謝している」
「ところで会長。関西の奴らと言えば小耳に挟んだ事がありまして。よろしいでしょうか?」
「……構わない」
「最近京都で騒ぐ『清微組』及び『無報隊』。奴らは関西の既存組織から傘下にくだるよう言われましたが、全て蹴ったようです」
「……なるほど。二つ共、独立組織のままだと」
「東影会《ウチ》の方に引き込めれば、関西への尖兵として使えるのではないかと」
「……いや、やめておく。僕の読みだと、『無報隊』は直ぐに消えるだろう、わざわざ引き込む価値はない。だが……『清微組』の方は気になるな」
「どういう事でしょうか?」
「……半分は直感だが、どうにもきな臭いんだ。清微組は何か裏が有る……よし、ついでだ。四元組には彼らの監視を命ずる」
「分かりました。何かおかしな所がないか探ってみましょう」
「……用は済んだ。やるべき事をやってくれ」
「へい」
四元組長が部屋を出ていく。
「そういえば剣崎会長。ご存じでしょうが、件の千擁四郎は京都に向かうそうですよ」
秘書が淡々と告げる。
「……一波乱起きそうだ。けど僕達の出る幕は無いだろうね」
「ええ、わざわざ火に飛び込む必要は有りませんから」
「……ゆっくり見物させてもらうとしよう」
*
【登場人物】
「剣崎」
関東を活動の中心とした巨大暴力団「東影会」の初代会長。
全身黒で、何故か顔を見せない。
実力、知能と共に底が知れないが千擁と戦う気は無いらしい。
「秘書」
剣崎の秘書。長々と語るのが苦手な剣崎に代わって説明した。
「四元組長」
四元組を纏める組長。
剣崎にはかなりの忠誠が有るようだ。
【組織】
「東影会」
関東一円を締めている巨大組織。会長は剣崎。
多数の組織を傘下に置いている。
現在進行系で東北や中部に勢力を伸ばしている。
ダンジョン災害後の混沌とした裏社会を、剣崎が力で制圧する事で生まれた。
「四元組」
灰風会の親組織である、東影会の二次団体。
東影会でも上席の組織で、傘下や組員も相当な物。
「灰風会」
東影会の傘下の四元組の傘下である組織。
つまりは三次団体にあたる。
それでも四元組内部では有力な組織だった。決して数人に潰されていい組織ではない。
「清微組」
京都の独立団体。
剣崎によると何かうさんくさいらしい。
「無報隊」
京都の独立団体その②
剣崎には軽んじられているが……。