ブラック経理の作中に出てくる「桜屋手形」について、少しだけ補足です。
まず、桜屋手形は現代でいう「中小企業の社債」のようなものではありません。
「桜屋という地方の商家が、何の裏付けもなく紙を出して、遠くの商人がそれを投資商品みたいに買っている」
というものではないです。
どちらかというと、作中の桜屋手形は、
・桜屋に預けた銭や品物の控え
・塩、味噌、米、干物などの現物と引き換えられる紙
・桜屋と継続取引のある商人同士で使われる支払い確認の紙
・織田家の兵站や物流と結びついた、限定的な信用の紙
に近いものです。
なので、京の商人全員が無条件にありがたがって受け取る万能チケットではありません。
信用して受け取るのは、桜屋と取引がある者、桜屋の荷を実際に受け取れる者、熱田や津島の物流に関わる者、あるいは織田家の後ろ盾を意識せざるを得ない者たちです。
作中で問題になっている偽手形も、「京中の大商人を全員だます魔法の紙」というより、
「桜屋の本物の手形を見たことがある者」
「桜屋との取引を始めたばかりの者」
「確認前に少し得をしたい小商人や仲介人」
「桜屋の信用が広がり始めた隙を狙われた者」
を狙った詐欺として扱っています。
桜屋手形の信用は、桜屋の名前だけで成立しているわけではありません。
後ろにあるのは、倉の中の現物、物流、取引記録、織田家との関係、そして「実際に引き換えられる」という積み重ねです。
紙そのものが偉いのではなく、紙の後ろにある荷と記録が信用されている、という感じです。
このあたりは今後の京編でも、偽手形や公開監査の話として少しずつ出てきます。
ざっくり言うと、
桜屋手形=投資商品ではなく、現物と物流に裏付けられた取引の紙
くらいに思っていただければ大丈夫です。