100PVありがとうございます。
読んでくださった方がいることが、とても嬉しいです。
まだ始まったばかりですが、少しずつ続きを書いていけたらと思っています。
感謝の気持ちを込めて、本編第1話直後の唯菜視点SSを置いておきます。
本編では見えなかった、帰宅後の小さなおまけです。
100PV記念SS『隣の姫は、一人でバタバタする』
自室へ戻ると、姫乃唯菜は靴を脱ぎきる前に玄関の鍵を掛けた。
片手にはスマホ。もう片方には、開封済みのゼリー飲料。
まずスマホを開く。
配信アプリ。
終了時刻。
アーカイブ。
最後の数十秒を再生する。
明るい声が流れ、配信終了の画面へ切り替わる。
その先はない。
隣室へ移動した後の音も、男性の声も、本名も入っていない。
唯菜は玄関の壁に背を預けたまま、画面を見つめた。
「……切れてる」
終了時刻を、もう一度見る。
「切れてるよね?」
表示は変わらない。
数秒待ってから、念のためもう一度だけ確認する。
「よかった……」
息を吐く。
そこで、スマホを操作していた指が止まった。
配信は切れていた。
何も起きていない。
「あっ……」
ゼリー飲料を持たせたまま、
「……配信、切れてないかもしれません」
と隣人に言ってしまった。
「ぅぅぅ……」
唯菜は玄関でしゃがみ込んだ。
スマホの画面には、配信終了済みの表示が残っている。
確認するほど安心する。
そのたびに、別のことを思い出す。
ようやく靴を脱ぎ、スマホとゼリー飲料を持ったまま寝室へ向かう。
ベッドへ倒れ込み、枕へ顔を埋めた。
動かない。
数秒後、足だけが動いた。
ばたばた。
止まる。
また、ばたばた。
唯菜は枕へ顔を押しつけたまま、手元のゼリー飲料を見る。
体を起こし、ひと口飲む。
甘い。
ベッドの上で膝を抱え、伏せたスマホへ目を向ける。
画面は暗い。
部屋には、自分しかいない。
唯菜はゼリー飲料を握ったまま、小さく呟いた。
「……忘れてくれますよね」