昨日、AbemaPrimeで杉並区の事件について話をした。楽待の編集者からも質問を受けた。興味がある方は見てほしい。
https://kakuyomu.jp/users/0207/news/822139843317950632 少しズレた感想かもしれないが……楽待の編集者からの質問に答えながら「家主は強制執行に立ち会うべきじゃないな」と考えた。
事件の被害者は家賃保証会社の社員と執行官で、家主ではない。しかしそう思った。なぜか?
誰の場合でも──とは言わない。あくまで私の場合だ。家賃保証会社の管理(回収)担当者だった頃の私は、催告はともかく断行(一般にイメージされる強制執行)には「家主、もしくは不動産会社に立会にきてほしい」と思っていた。今回の事件は断行時に発生している。
断行は当然、残置物の撤去のことである。だから、設備品は撤去しない。してはいけない。その部屋に残しておくものだ。設備品は事前に確認する。
しかし、仮に3DKの部屋の断行を実施するとしよう。エアコンが3台。そのうち2台は設備、もう1台は延滞客が取り付けたもの。家主や不動産会社はそう言っていた。はて、どのエアコンを残せばいいのだろう? 何か部屋の配置も彼らが言っていたものとは微妙に異なるが……。
家主や不動産会社の社員だって、うまく説明できない場合はある。更には、部屋に入れば何だかんだと「これは撤去していいのだろうか? 設備なのだろうか?」と迷うものが見つかる。そういうものだ。
間違って撤去してしまっても即処分するわけではないので返却すればいいのだけど……面倒なのだ。だから断行時には、設備品が何かを実物を見ながら指示してほしい。つまり家主なり不動産会社の人間が現地に来てほしい。
断行後には鍵を手渡しで返却できるのでスムーズでもある。
かようなわけで、私は断行時にはできれば家主が来てほしいと思っていた。
家賃保証会社が介在する明渡訴訟も、殆ど建前だが原告は「賃貸人」。サブリースの場合などで少し例外はあるのだが、基本的には「賃貸人=家主」である。家賃保証会社が主導するが、あくまで原告は家主なのだ。
そして家主は、当たり前だが訴訟対象の物件の持ち主である。断行時、部屋に破損があれば頭にもくるだろう。
一方で、延滞客──被告にとって家主は「俺を訴えやがった相手」と映る場合が多々あるのだ。実際、そう口にした延滞客は何人もいる。家主からすれば理不尽な話だろうが。
家賃保証会社の管理(回収)担当者にとって、家賃が延滞しようが物件が破壊されていようが、結局のところ他人事である。自分の貯金が減るわけではない。それで良いのだ。だから冷静に合理的に対応できる。
いまから四半世紀程前に私は小さな消費者金融で働きはじめた。「自分のカネと思って回収しろ」。消費者金融で定番の訓示。バカ言うなと思った。
自分のカネではないから冷静に、法律を守って回収業務をこなせるのだ。
もし自分のカネだったら? 延滞客はカネも返さず連絡も取れない、そんな状態で「督促は朝8時から夜9時まで~」なんて会社に言われてみろ。「黙れバカ」と応じるに決まっているだろう。他人事だからルールを守ってカネの回収業務ができるのだ。
離婚調停もそうだろう? かつて愛し合った男女ですら、第三者を介して話し合わねばならないのだ。ましてや元来から赤の他人の家主と延滞客だったら?
強制執行をしないわけにはいかない。執行官・執行補助者・立会人、そして「原告側の誰か」は必要だ。どうしたって誰かが現地に行かねばならない。しかしそれが家主である必要はない。
AbemaPrimeでも話したが、相手が思いきり「最初から殺る気」だったら、防ぐのはほぼ不可能だと思う。しかしそれでも、その場で「殺る気」になってしまう確率だけは、下げるべきだ。だから当事者である家主は、催告や断行の現場に来るべきではないかもな……と思った。「自分を訴えた相手」を被告が見てしまうと、その場で殺る気になってしまうかもしれないから。もっと事件が発生しやすくなるかもしれないから。