助手席に子どもがいる、「おばちゃん」ドライバーの運転する珍しいタクシー。そしてこれまた珍しい、海外の方の、しかも長距離どころではない行先への走行依頼。インバウンドの話も出つつ、そこからお話はスタートします。さらりとした人情ものなんですが、なんだか妙に分厚くて。人一人一人の気持ちですものね。一人で扱いきれないもの、たくさんの人が抱えている。現実はそうそう、ましてや過去が変わることはありません。けれどその重みを分かち清算できたとき、明日の光はほんの少し目を覚ますのかもしれません。
大阪弁の軽やかな口調のセリフと、登場人物たちそれぞれが心の中に持つ思いが重なり、とても良い雰囲気のお話になっています。ロードムービー短編として秀逸だし、優しいラストにぐっときました。作者さんは「突貫で書いた」とおっしゃっていますが、そんなことを感じさせないくらいの完成度です。私もこんなタクシーに乗ってみたいなぁ。本当に素敵なお話なので、ぜひ読んでみてください。