白花香

YOMと桐生スケキヨ

第000話「天を舞う羽を広げる妖精」

【〇〇〇 天を舞う羽を広げる妖精】


 仕事帰りの一杯。そう思い立ち寄った酒場で見たのは、異様な光景だった。

 普段ならば食欲をそそる料理の匂いと、胸を高鳴らせる酒の匂いに満ちた酒場にあったのは血の匂い。

 油燈(ランプ)の灯りが照らしていたのは、一面の血だまりだった。斬られ、倒れている男たちは両手の指に数え切れない。

 その真っ赤な中にふたつ――真っ白の立ち姿があった。

 頭巾(フード)を被っているふたりの手には光を返す刃が見えた。だが、それは瞬きの間に外套(マント)の下へと納められていた。

 床に壁にと血が飛び散る中、白装束を纏ったその二人には一滴の返り血もない。

 真っ赤の中の白二つに、見た物は恐怖を覚える。

 白装束のふたりはくるりと踵を返すと、何事もなかったかのように店を出た。

 その場にいる者たち数名の視線を集めはしたが、誰ひとりとして声をかける者はいない。

 客のひとりがつぶやいたのは、その姿が見えなくなってからしばしの後であった。

 

「……あれは、天羽妖精隊(あまばねようせいたい)だ」


 と。

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