「踏切を渡ると大切なものを失う」――
シンプルでどこか聞き覚えのある噂話から始まる本作ですが、その“失うもの”の扱い方が非常に巧みで、読者の想像を一段階上から裏切ってきます。
深夜2時という限定された時間、存在しないはずの踏切、鳴り響く警報音――
要素自体は王道ながら、それらが丁寧に積み重ねられることで、現実と地続きの不気味さがじわじわと迫ってきます。
また、派手な恐怖表現に頼らず、違和感の積み重ねだけで読者を不安に引き込む構成も秀逸。
読み進めるほどに「何かがおかしい」という感覚が膨らみ、気づいたときにはもう後戻りできません。
静かに、しかし確実に心を侵食してくる――
そんな余韻の強い都市伝説ホラーでした。