隣国ウリエルに侵略したノーザリオン軍は、踏み潰した街でほしいままにウリエル人を虐殺し、若い女性を餌食にする。まさに毒牙にかけられそうになっていたターニャを、横合いから奪い取るように連れ出した、ノーザリオンの将校イグナートの真意とは? ノーザリオン軍が闊歩する街で息をひそめるターニャに、イグナートは思いもよらないことを伝えてくるのだった……。
当レビュー筆者は、現実世界の「あの地域」の戦争が思い起こされ、あらためて戦争という行為の残酷さを思わずにはいられなかった。地名こそ架空だけれど、戦争という状況におかれてむき出しにされた人間の醜さは決して絵空事ではない。そんな中、ターニャとイグナートの出会いは、小さな花のような優しくあたたかな感情を読み手にもたらしてくれる。果たして救われたのは「どちら」だったのか。ターニャは生き延びることができるのか。戦争というものを考えずにはいられない現在、非常に読みごたえがあり、重く苦しい中にも爽やかなカモミールが香るヒューマンドラマ。