人と人の関係は、電子回路に似ている。 条件が揃えば電流は流れる。そこに特別な意味があるとは限らない。 練馬区の外れ、石神井川のほとり。自動車整備工場「多田モータース」の倉庫で、ドラムとギターを鳴らす二人の少年がいた。ヒロシとタツヤ。中学で出会ったきっかけは、一枚のTシャツだった。 共通点は洋楽と、ひそかに練習していた楽器。それだけ。バンドを組むわけでもなく、ライブの予定もない。ただ音を出すのが楽しかった。 やがて二人は別々の道を進む。ヒロシは高専を卒業して自動車メーカーへ就職し、のちに実家の整備工場を継ぐ。タツヤは大学へ進み、広告会社で働く社会人になる。 住む場所も、仕事も、家族も変わっていく。 それでも二人が顔を合わせれば、どこかで必ず音が鳴った。 友情でも愛でもない。 ただ、規格が合う二人の回路に、三十年のあいだ電流が流れ続けていただけだ。 これは、その回路の物語。
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