教室のざわめき、部活動の熱気、進路への焦り、恋に揺れる心。
本作には、青春という言葉だけでは括れないほど、生々しく、眩しく、少し危うい高校時代の空気が閉じ込められています。
舞台は1980年。今とは異なる価値観や学校文化が丁寧に息づいていて、その時代を知る人には懐かしく、知らない世代にはまるで一つの異世界を覗くような新鮮さがあります。
特に魅力的なのは、ミステリーでありながら「事件」だけを追わせないところ。若さゆえの自意識、友情、恋、立場の違い、正しさの衝突――そうした人間の感情そのものが物語を動かしているため、登場人物たちが単なる謎解きの駒に見えません。
軽やかな青春の日常と、その足元に忍び寄る不穏さ。その温度差が次第に読者を物語の奥へ引き込んでいきます。
題名にある「解けない方程式」とは何なのか。
答えを知りたくて読み進めるうちに、いつの間にか問いそのものが心に残る。
青春ミステリーが好きな方はもちろん、人間の弱さや若さの危うさまで描いた物語を読みたい方にもおすすめしたい私も好きな一作です。