こよなく料理を愛する38歳独身男性が、悪役令嬢もののような世界の令嬢、セリーヌとして転生し、料理の力でヒロインの心を救っていく物語です。
章題がフルコースの順に沿っているように、一貫したテーマは「料理」。
飯テロ描写は、もちろん魅力的です。
野菜の甘み、新鮮な食材のふっくらした歯ごたえ。どれもお腹に訴えてくる丁寧さで描かれています。
だけど、この物語の最大の良さは、その描写に、心にじわっとしみて来る「温かみ」というソースが足されているところです。
主人公が作るレシピは、高級食材を並べた未知のご馳走ではなく、自分の記憶とも重なる食材の料理。
特に最初に登場する野菜のポタージュスープ。
両手で器を包み込んだ時の温かさや、じんわり広がる野菜の甘みを思い出す人も多いのではないでしょうか。
記憶との共感が強いレシピだからこそ、その料理が「誰かのために作られている」と、真っ直ぐに届く。
本作の料理には、食べる人を思いやる優しさがあります。
元気になってほしい。 笑顔になってほしい。
何のために、その行いがあるのか。
そこが定まり、気持ちが込められているからこそ、読んでいるこちらの心まで温かくなるのだと思います。
「ですわ」口調の元おっさんシェフの令嬢をはじめ、可憐な少女や老執事、個性豊かな仲間たちも魅力たっぷり。令嬢にプロポーズしまくる少年の可愛いさは国宝級。
美味しいご飯って、いいよね!
そんな気持ちになれる、優しく温かなフルコースをぜひ味わってみてください。
個人的には、応援コメントにセリーヌ様からお返事をいただけるのも密かな楽しみでした。
人間の脳は興味がなければ入りません。特にカタカナ、漢字は作品が好きでなければ受けつけにくいと思っております。
そして一話に登場するキャラが多ければ多いほど情報量が多くてブラバされることが多い。悪役令嬢はタイトル同じものが多いので内容をどう調理するかによって読者が分かれるテンプレと考えております。
こちらの作品は悪役令嬢の中でも珍しいTS。そして最初が「答え」のシーンからスタート。そして回想を挟んで答え合わせの部分に戻る。
この構成力の高さが世に流れる作品と違い”面白い”を持ってくる。
そして作者様の癖を全力で詰め込んだ独特の比喩。
これはどんなものだろう?これは何だろう?とひとつひとつ調べたくなるので、とっても勉強になります。
ストーリー構成も料理のフルコースに例えているので何が作られるのか事前にわかりますが、この手腕がお見事!!豊富な語彙と料理に対する純粋な愛と知識がなければこの作品は構築できません。
悪役令嬢というタイトルが果たしてどこにあたるものなのか?という答え合わせは料理のフルコースをたっぷりと堪能した時にあなたの中で自然と答えが出るものと思います。
テンプレである悪役令嬢を作者様の手腕でおいしいフルコースに調理された最高の作品を、どうぞ骨の髄まで召し上がれ。悪役令嬢に対するものの見方が変わるかもしれません。
ただひとつだけこの作品の難点は……「猛烈な飯テロ」です。特に5話目から要注意!!
あまりにも美味しい描写が多いので、空腹で読むか、満腹で読むか、脳みそと体と相談してからお召し上がりください。料理長から満を持してお勧めさせていただきます。
それではどうぞごゆっくりご堪能くださいませ。
皆様、ご機嫌よう。
巷にあふれる、中身のスカスカな「悪役令嬢もの」という名の出来損ないのテリーヌに、胃もたれしていらっしゃいませんこと?
そんな退屈な日々に終止符を打つ、とんでもない一皿に出会ってしまいましたわ。
まず驚かされましたのは、その「お皿」のどっしりとした重厚感ですわ。
婚約破棄、TS転生、百合……昨今の流行をこれほど贅沢に盛り込みながらも、その下支えとなる世界観構築は、まさに伝統的なフレンチの器のように堅実。
辺境伯という地位が持つ真の重み、貴族としての義務、国家への献身……。
単なる乙女ゲームの脚本という「薄っぺらな設定」に頼らない、歴史への深い造詣に裏打ちされた肉付けがあるからこそ、私たちは安心してこの物語に陶酔できるのです。
そして主役であるセリーヌ……いえ、柊哲郎という一人の料理人の生き様!
彼の視点から語られる、料理縛りの徹底した比喩の数々。これがもう、あまりにも秀逸でオリジナリティに溢れていて、比喩に出会うたびに脳内へ芳醇な香りが漂ってくるようです。
「悪役」と蔑まれながらも、辺境伯令嬢としての気品と誇りを失わない彼の振る舞い。ジャガイモ王子(失礼、ルイ王子のことですわね)のような小物の計略など、彼の研ぎ澄まされた言葉の前では、一切れのバターのように溶けて消えてしまうのです。
婚約破棄から始まり、あろうことかヒロインを最高の美食で「餌付け」してしまうという、この逆転の発想。フレンチのコースになぞらえた各話のタイトル通りに展開する物語は、まさに毎日提供される「獲れたての鮮度」を感じさせるエピソードばかりでした。
最後の一口――2人がそれぞれの名を店名に冠し、新たな人生の一歩を刻む結末には、温かくも爽やかな、言葉に尽くせぬ余韻が残りました。
これはもう、単なるweb小説の枠を超え、一般の文芸を好む方々にも自信を持って推奨できる、文字で味わう芸術品。
わたくしの厳しい審美眼を、これほどまでに見事に満たしてくれたことに感謝いたしますわ。
オーヴォワール(さようなら)、素晴らしい時間をありがとう。
……は!
失礼、どこかの美食家の夫人が乗り移っていたようです。
ですが、この書評に偽りはありません。このままレビューとして捧げさせていただきます。
作者の日向さん、この物語はあなたの料理への深い知識と愛なしには書けない、まさに最高の「スペシャリテ」でした。
大変美味でございました。ご馳走様でした。
そして初の長編完結、本当にお疲れ様でした!
「異世界TS転生・悪役令嬢もの。いわゆる定番ですわね」と片づけてしまうのは、あまりにも早計でしてよ。
この作品の真骨頂は、なんといっても圧倒的な飯テロ力にございますの……!
作中のあらゆる描写には、食材や調理にまつわる比喩が実に巧みに織り込まれておりますのよ。
食事の場面でなくとも、つねに食欲を刺激されてしまう――そんな恐ろしいまでに罪深い作品に仕上がっておりますわ。
また、TS転生した主人公が実に紳士的であるのも、たいへん魅力的ですわね。
「百合はふだん嗜みませんの」という方であっても、ときめきを覚えながら楽しめる、ほどよく上品な甘さに仕上がっております。
わたくしは別プラットフォームにて、すでに完結まで拝読しておりますけれど、
最初から最後まで、物語の構成がじつに見事でしたわ。
一話一話が美しく響き合い、さりげなく置かれた伏線が、のちに絶妙なスパイスとなって効いてまいりますの。
それらが、鮮やかな彩りをともなって回収されていくさまは、まことにお見事としか申し上げようがありませんわ。
読み終えたあとに訪れるのは、贅を尽くしたフルコースをいただいたあとのような、満ち足りた幸福感でしてよ。
ひとりの読者として夢中になれるのはもちろんのこと、創作に携わる者の視点から見ましても、学ぶところの多い作品でございますわ。
後悔はさせません。
どうぞ心して、ご賞味あそばせ。
※このレビューは、主人公セリーヌさまへの敬意をこめて、令嬢口調でお送りしておりますわ。
※深夜にお読みになるのは危険ですの。飯テロ被害は保証いたしかねましてよ⚠️