「人間は2秒に1回、選択している」という大和の定理から始まるこの物語の仕掛けは、ファンタジー要素(マジックライトダイス・女神)をあくまで「選択の補助線」として使う点にあります。奇跡的な道具を手に入れた男が自分のためではなく、他人の人生の岐路でそっと背中を押すために使う——この逆転が作品の核心でした。
美奈子さんと健さんの親子がついに手術室の前で言葉を交わす第23話は、この作品の白眉です。「今、孝行してもらってるよ」という一言に、これまでの選択と後悔と愛情がすべて溶け込んでいて、もらい泣きする奏陽人の姿と重なって胸に刺さります。
ハムレットの「To be, or not to be」から無地のダイスまで、選択というテーマを様々な角度から積み上げながら、最後にタイトルの意味が静かに回収される構成も見事。ありお ゆめさんの作品群の中でも、人生への肯定感が最も真正面から描かれた一作です。