ヒーローって、強いから輝くんだと思ってました。この作品を読むまでは。
主人公の守山一路は、低身長がコンプレックスの「ヤラレ役」スーツアクター。
事故で異世界に飛ばされた彼は、自分がヒーローになるんじゃなくて、剣の才はあるのに戦う覚悟を持てない皇女アウロラを、本物のヒーローに『演出』していきます。
この立ち位置がまず面白いんです。
倒される側だからこそ知っている魅せ方、視線の集め方が、そのまま物語の武器になる。
おすすめは、アクションの疾走感と、その裏でずっと流れてる「ヒーローって何なんだ?」っていう問いが最後まであるところ。
読みながら普通に応援したくなってしまう作品です。
まず第一に、物語が面白く、次へ次へと読んでしまいます。
「ヤラレ役」が異世界でそのスキルを使って戦う、という冒頭から面白いのに、読み進めるうちにどんどん面白くなる!
ヒーローアクションらしい疾走感と、守山の中にある思いがどちらもアツくて最高です。異世界を駆ける躍動感あふれる筆致をぜひ体感してください!
読みながら思わず「がんばれー!!」と言ってしまうような、胸熱展開の連続に心躍ります。
そして、この物語に特に心惹かれる理由はのひとつは、戦う彼らのかっこよさが、「ヒーローとはなんなのか?」という問いと常に結びついていることだと感じます。
「ヒーローになれない」守山の活躍から目が離せません。
まずヒーローとは何を想像しますか?
私はヒーローものと言えば、「漫画」「アニメ」「特撮」というジャンルが多く出回っていると思いますが、何よりもこの”動”を表現する舞台を小説で書く作者様の筆力に圧倒されております。
小説ですよ、アクション作品は沢山ありますが、ヒーローもののアクションは匙加減を間違えるととんでもないところに行きつきます。
その絶妙な「静と動」のバランスを絶妙に保つ守山の身体スキル!
私の脳内で守山が動いているのが文章から滲み出てくるのです。この語りすぎない地の文で人を引き付けるのは最高にうまい。
さて、本編についてですが、
物語はわけあって見知らぬ世界にきた主人公・守山。
彼は低身長のせいでたとえ身体能力が高くてもオーディションで全く目に止められなかった。それでもヒーローになることを諦めきれず生きる。
そんな彼が出会った少女アウロラ。彼女のもつ不思議な剣は魔物を引き寄せてしまうのでアウロラはたった一人で頑張ってきたのだが、守山と出会ったことで彼女の運命も変わっていく。
「俺が、お前をヒーローにする」
最高です。自らがたどり着けなかった場所に彼女を連れていくと言うのです。
果たして守山はアウロラをヒーローに出来るのか。それとも、自分がヒーローになるのか!?(第一章拝読までのレビューですので答えにはたどり着いておりません♪)
彼の決め台詞は本当のヒーローです。
子どもの頃にあこがれた存在に、ここで出会えます。
守山の深い台詞の中に込められた熱き魂の声を是非堪能してください。
私は守山がヒーローだと叫びたい!!
少し大袈裟な表現をすれば(大袈裟でもないのだけど)、本作の醍醐味は間違いなく「ヒーローとは何者を指すのか」という存在哲学にあります。
アクション描写、巧妙な設定、コミカルな掛け合い――本作を彩る要素は多々あります。その一つ一つもまた重要な要素だと思います。
それでも私は、本作の最大の価値であり描いているものは、実存そのものであるとそう感じずにはいられません。
「生きている」。一言で言ってしまえば簡単な言葉ですが、その言葉が本作ほど多層の意味を持ち、テーマである作品はなかなか無いのではないでしょうか。
そして、読めば読むほど、「だからこそ」という主人公の立ち位置をこのように設定したことの価値と意義を感じることになると思います。
ヒーローとは? カッコよさとは? 生き様とは?
本作には、純文学や神話の世界で紡がれてきた、ある種の伝統的命題が真ん中に据えられていると言っても過言ではないと思います。
ジャンルを超越して読まれる価値のある作品。まさに本作こそその言葉を贈るに値する作品だと思います。
本作は、特撮の「ヤラレ役」に誇りを持つ男『守山』が、亡国の皇女を“真のヒーロー”へと仕立て上げる異色のファンタジー作品。
特筆すべきは、主人公の「見せ方」に対する執念です。攻撃を受ける側だからこそ成立する“魅せる動き”、視線誘導、立ち位置――ヒーローを輝かせるための裏方の技術が、物語そのものの構造として組み込まれています。
この視点が、本作を唯一無二の読後感へと押し上げてくれる。
加えて、作者様の五感に訴える描写も秀逸であり、肉を打つ衝撃や風圧、異臭までも描かれる戦闘シーンは必見です。
「ヒーローは人の目線を上げさせるものだ」という哲学のもと、敗者として生きてきた男が、少女に“歓声の舞台”を用意するという熱い展開。
主役になれなかった者が誰かを主役にする――その在り方こそが真にヒーローであり、本作最大の魅力と言えるでしょう。
主役になれなかったと考える大人たちに、一度は読んでいただきたい一作。