荒廃した世界は、ゆっくりと、しかし確実にナノマシンによって蝕まれている。空には黒い立方体が、睥睨するかのように浮かぶ。そんな世界を主人公は記録するために旅している。機械仕掛けの主人公の名前も、それを表すレコーダーだった。
主人公は旧人類の「遺跡」を巡り、旧人類たちの営みを記録していく。かつてコンビニと呼ばれた遺跡では、ポテトチップスの空の袋が信仰の対象となっていた。それはただの袋ではなく、記憶の入れ物として信仰されていた。
団地とかつては呼ばれた場所で歌われていたお祝いの歌。そして最果ての北の地へ。
主人公の相棒は、記録する価値がない物ばかりだと言う。しかし主人公はそれに対して価値がない物があると反論する。また、相棒は主人公にそれを記録することは危険だと警告する。この荒廃した地の<アーカイブ>が抹消対象とするだろうと。しかし主人公は旧人類の失われゆくものを記録し、そして――。
哲学的な言葉の言い換えや旧人類の物の捉え方に、ハッとする一作でした。
荒廃した世界や遺物、記録や記憶が好きな方必読です。
是非、ご一読下さい。
高度なAIによって「管理」され、感情さえもノイズとして削ぎ落とされる静かな終末世界。
そんな荒野を走る主人公が拾い上げたのは、かつて世界を熱狂させた伝説のロックバンド、レッド・ツェッペリンのレコードでした。
本作の魅力は、何と言ってもその圧倒的な「エモさ」にあります。
特に、中身の入っていないポテチの空き袋を「神の遺物」として崇める人々の姿には、滑稽さを通り越して、失われた文明への切ない郷愁を感じずにはいられません。
無機質な機械の体を持つ主人公が、禁じられた音楽を通じて「人間らしさ」に触れていく過程は、まるで一本のロードムービーを見ているような美しさです。
SFが苦手な方にこそ読んでほしい。
このノイズに満ちた熱い物語は、あなたの心に必ず何かを残してくれるはずです。