コンビニの軒下にぶら下がる電気殺虫灯。
そこへ誘われる羽虫のように、登場人物たちはそれぞれの事情を抱えたまま、避けがたい運命へ近づいていきます。
本来なら交わるはずのない二組が、ひとつの場所へ向かってしまうクライムサスペンスです。
まず、タイトル。
生まれてから今日まで、誰もが七日に一度、何度も何度も通り過ぎてきた火曜日です。
けれど読み終えるころには、その見慣れた曜日の奥に、別の冷たい意味が潜んでいることに気づかされます。
このタイトルの選び方と効かせ方だけでも、作者様のセンスが光っているのです。
そして、宮本 賢治先生のお作品すべてに共通して大好きなところは、場面が映像のように浮かんでくるところです。
車内の空気、店の雰囲気、食べ物の描写、何気ない会話。
この映像が浮かぶような描写の中で、生活の手触りが丁寧に描かれているからこそ、そのすぐ隣にある危うさが、いっそう不気味に際立っていくのですね。
人はいつ、どちら側へ傾いてしまうのか。
たまたま選んだ道、たまたま交わした言葉、たまたま差し出した親切。
そのわずかな積み重なりで、人生は思いもよらない方向へ転がってしまうのかもしれません。
そして私は、この作品からひとつ学びました。
親切は尊い。けれど、親切にする相手はちゃんと見極めたい、と……(笑)
全13話の中に、構成の妙と、緊張感と、人間のどうしようもなさが詰まったお作品。
みなさまにも映画を一本観終えたような満足感と、あとからじわじわ効いてくる余韻を味わっていただきたいです。
是非お読みください。おすすめいたします。
かようび、警察官のタカシとその妻のサイカはグレーのSUVを走らせる。妊娠中のサイカのお腹が臨月に入ったため、安静にと彼女の実家に向かっているところだ。
と、そこにヒッチハイクをする一組のカップル。
タカシは無視しようとするが、人助けはするものだというサイカの言葉に、車を停めるのだが――。
ヤクザ者同士の裏切りに端を発する、クールでバイオレンスなアクションドラマ!
これまでの宮本様の諸作品はどんなに辛い場面があろうとも、どこかに救いある展開を必ず見出すことができたように思いますが……今作は飛び切りにノー・マーシーです!
しかしそれ故に、ノワール映画のような濃厚な血の香り、胸を締め付けるような緊張感を楽しめるかと思います!
飯テロ描写に関してはもはや語るまでもなく達人中の達人!
ドロップを口に含みたくなり、熱々のハンバーグを食べたくなり、紅茶を嗜みたくなりました!
ますます進化を続ける宮本様の新たな傑作、ぜひともご一読を!!!
今更私が説明するでもなく、
宮本先生の文体はかなり独特です。
物語でありながら詩のような。確かに宮沢賢治イズムをお持ちのようです。
この人の作品には『でも』とか『しかし』とか『差し当たって』とか『ところが』のような、文章のリズムを出したいがためにつかいがちな枕詞があまりないのも特徴です。
その分、メッセージが鋭利に突き刺さってくるのですが……
それで今回のテーマの作品です。
私個人としては、そうですね。心の体力に余裕がある時にお読みすることをお勧めいたします。
もしくは、洋画で言ったら、ファニーゲーム、セブン、ミリオンダラーベイビー、辺りが好きな方はまあ『刺さる』と思います。
軽くネタバレになってしまうのか……
まあ、いきなり任侠から始まるのでネタバレではあるまい!
重たいです!
それも宮本先生の文体的にかなり鋭利に、シンプルな言葉で淡々と事実を突きつけてくるので、その分読者の頭の中はうるさくなるんですよ! こんなやり方があったんだ! と感動してしまいました。
ラストは、洋画で言うところの、ミストや、十三日の金曜日みたいなのとはまた別の、
……言っていいのかな……
何かが待ち受けてます。
これがまた衝撃的でした。
理不尽と共に、教訓めいたものまで与えてくれるこの作品。
ぜひ、ご一読を。