虚構の記憶をベースとした共依存を感覚的な文章で刻印するかのように描いている。何が真実で嘘からわからないふわふわした意識とは裏腹に、鋭い感覚はそれらが紛れもない「本物」であることを示し、また主人公をそこに縛り付ける。夢で見た怪物が偽物でも、感じた恐怖が本物であるように、今作の主人公が見つけた、甘く、悲しい、幸福も、本物である。人間にとって感じたことは常に真実ではあるが、同時に、現実に対して誤った感覚を所有するのは、危険な病でもあり、共依存よりも恐ろしい事態を引き起こしかねない。が、春の日差しを暖かいと思うか、まだ寒いと思うかは、実は人それぞれである。我々は、そんなありきたりな話題でなんとなく互いを分かった気になるけれど、本当は今作の主人公たちと、そう変わらない状況にあるのかもしれない。