神代シンギュラリティ:~最強の美形神様一家、家の中ではただのバカ夫婦。愛と煩悩が渦巻く九頭身ラブコメディ~
kyono_hinata
第1話『論理の神、実家の聖域(オタク部屋)に散る』
【シーン1:高天原のモーニング・ルーティンと筋肉の闖入】
高天原にあるオモイカネの邸宅。 朝の光が差し込むキッチンでは、九頭身の美青年・オモイカネがエプロンを締め、0.1ミリの誤差も許さない手つきで厚焼き玉子を切っていた。
「……よし。熱伝導率と卵液の粘度から計算した、完璧な仕上がりだ。これを摂取することで、本日の演算効率は3.2%向上する」
銀縁眼鏡をクイと押し上げる彼の輪郭は、細密なペン画のようなハッチングで縁取られ、知的な静謐さを漂わせている。 そこへ、背後から鮮やかな色彩の嵐が吹き荒れた。
「マジメ君、おっはよー! 今日の卵焼き、ハートの形にしてくれた?」
水彩の滲みのような柔らかな質感を持つアメノウズメが、夫の腰に飛びつく。九頭身のモデル体型同士の抱擁は、本来なら一幅の絵画のように美しいはずだが、現実は違った。
知性の神オモイカネの頬には、だらしないピンク色のハッチングが斜めに走り、自慢の銀縁眼鏡もズレ落ちている。 クールな鉛筆画の輪郭が、ウズメの鮮やかな水彩に侵食されてデレデレに溶け出し、もはや九頭身ではなく単なるゆるキャラである。
「ウズメ、危ない! 刃物の軌道が逸れ……ああっ、計算が!」
「あはは! マジメ君、顔真っ赤! ズレた方が面白いってば!」
神としての威厳は蒸発し、部屋には甘ったるい桃色の磁場だけが渦巻いていた。
そこに、邸宅の重厚な扉が物理的に粉砕されて吹き飛んだ。
タンクトップ姿のタジカラオが、滝のような汗を流して転がり込んでくる。彼もまた、彫刻のような九頭身の巨躯を誇るが、その表情は絶望に染まっていた。
「オモイカネ! 助けてくれ、もう俺の筋肉じゃあいつを止められ――」
しかし、目の前の「知性の欠片もないピンク色の光景」を視界に入れた瞬間、彼はその場で硬直し、さらに深い絶望の淵へと叩き落とされた。
「――仲がいいな、おまえら……」
「タジカラオ……。扉の修繕費用と、私の朝食の損失をどう補填するつもりだ」
「そんなこと言ってる場合じゃねえ! 下界の母親が泣きついてきたんだ。自分の娘が、俺とお前を『不浄な本』に描いて、神棚に供えてるって!」
オモイカネの手から、箸が落ちた。
「……私と、君を? 不浄な……本?」
「そうだよ! しかも俺が『前(攻め)』でお前が『後ろ(受け)』らしいんだ。意味わかんねえけど、とにかく娘が『これぞ真理!』って叫んで、部屋から一歩も出てこねえんだよ!」
「…………」
オモイカネの脳内因果律サーバーが、一瞬でオーバーヒートを起こし、派手なエラー音(ピー音)を鳴らした。
【シーン2:実家の聖域と、禁断の神棚】
「ここだ……。……このドアの向こうが、『根の国(ねのくに)』の入り口だ」
タジカラオが震える指で指し示したのは、ごく普通の建売住宅の二階、ピンクのペンギンのプレートが下がったドアだった。しかし、そのドアには「結界:立入禁止」「推しが尊すぎて御霊振(みたまふり)中」という物々しい張り紙が踊っている。
オモイカネは、その「結界」の奥から漏れ出す異常な熱量に、新調したばかりの銀縁眼鏡を曇らせて戦慄した。
「……魂の振動数が異常だ。物理的な崩壊(爆発)を待たずして、概念的に消失するつもりか、彼女は。御霊を振るわせ過ぎて、己の実存という『定数』まで書き換えてしまう……! 人間の『推し』とは、これほどまでに暴力的な特異点(シンギュラリティ)なのか!」
「あらー、いいじゃない! 活気があって!」
ウズメは遠足気分で、その後ろではウズメカネが「アノテーション(手書きの注釈)」を空中に浮かべて状況を分析している。
『※注:室内温度、サキの興奮により平熱より3度上昇中』
「お、お待ちしておりました神様方!」
廊下で縋り付いてきたのは、エプロン姿のサキの母親だった。
「あの子、もう三日もあの本を神棚に供えて『最高……公式が最大手……』って呟いたままなんです! 罰当たりで、もう、母親として情けなくて……!」
「安心しなさい、お母さん。私が論理(ロジック)で彼女の目を覚まさせよう」
オモイカネは眼鏡を光らせ、ドアを開け放った。
「サキ君、その非生産的な――ッ!?」
部屋に踏み込んだ瞬間、九頭身の神様たちは絶句した。
そこは、ある種の「異界」だった。壁一面に貼られた、オモイカネとタジカラオ(の、美化された)ポスター。そして部屋の北西、最も良い位置にある神棚。 そこに鎮座していたのは、一冊の薄い本だった。
表紙には、**『剛腕神の独占欲:知恵の神が眼鏡を外す時』**という、あまりに直球なタイトル。
そして、筋骨隆々なタジカラオに壁際へ追い詰められ、潤んだ瞳で赤面しているオモイカネ(受)の姿が、緻密なアナログスケッチ風に描かれていた。
「………………」 オモイカネのハッチング(影線)が、みるみるうちに青ざめていく。
「な、なんだこれは。私が、タジカラオに、このような……物理的に不可能な角度で抱きしめられ……しかも、なぜ私が『下(受)』なんだ……? 筋力比率、身長差、社会的な役割から演算しても、私が受け側に回る確率は0.0003%以下のはず……」
「パパ、計算の前提が違うよ」
ウズメカネが冷ややかに、本を指差した。
「この絵師の解釈では、パパの『知的な反抗心』がタジカラオさんの『野性的本能』に屈する瞬間のエロスに、特異点が発生しているんだ。つまり、パパが『受け』であることこそが、宇宙の真理(ファンタジー)なんだよ」
「ウズメカネ、余計な分析をするな!」
「きゃあああああああああ!!」
サキが叫び声を上げて飛び起きた。
「本物! 本物の『受け攻め』が揃って私の部屋に!! しかも奥さん同伴!? なにこれ、不倫!? 修羅場!? 最高すぎて因果律が死ぬ!!」
「マジメ君、見て見て! このページのあなた、すっごく可愛く描けてるわよ!」
ウズメは憤慨する夫をよそに、同人誌を手に取って感心している。
「へぇー、タジカラオって脱ぐとこんな感じなの? オモイカネ、負けてるわよ、色気で!」
「ウズメ!! 君まで何を言っているんだ!!」
あまりの非論理的な状況に、オモイカネの眼鏡にピシッとヒビが入った。
【シーン3:睫毛(まつげ)の影と、知性の敗北】
「いいか、サキ君。落ち着いて論理的に聞くんだ」
オモイカネは、ヒビの入った眼鏡をあえて外した。その素顔は、9頭身の黄金比がもたらす暴力的なまでの美形。顔面には、苦悩を表す緻密なハッチングが幾重にも重なっている。
「この本の12ページ。私がタジカラオに顎を掬われ、伏せ目になった際の『睫毛の影』の描写だ。君はこれを『誘っている』と解釈したようだが、光学的な屈折率と私の表情筋の弛緩率を計算すれば、これは単なる『眼精疲労による一時的な瞬き』に過ぎない。つまり、誘惑の意図は0%だ!」
「ち、が、う、の!!」
サキがベッドの上で激しくのたうち回る。
「その『無自覚な隙』こそが、受けの極致なの! 完璧な知性の神様が、筋肉の塊(タジカラオ)の前でだけ見せる『計算外のノイズ』! そのノイズに私たちは宇宙の真理(エロス)を見てるの! 屈折率とかどうでもいい、尊ければそれは正義なの!」
「尊ければ正義……? 根拠のない主観を……正義だと……?」
オモイカネの脳内で、宇宙の基本法則が音を立てて崩壊していく。
「パパ、もうやめなよ。論理(ロジック)で情動(パッション)を上書きするのは不可能だよ」
ウズメカネが、静かに一歩前へ出た。その瞳に冷徹な知光が宿る。
「……真名開放。ニギミタマサトリノミコト、起動」
ウズメカネが空間を軽くフリックすると、サキの頭上に手書き風のアノテーション(注釈)が次々と展開された。
『※注:対象の「推し欲」を「悟り」へと変換。脳内報酬系を一時的にシャットダウンします』
「え……あ……」 サキの動きが止まった。荒かった呼吸が整い、その瞳から狂気が消え、代わりに広大な宇宙を眺めるような穏やかな光が宿る。
「……見えた。オモイカネ様が『受け』か『攻め』か、そんなことは些細なことだったんだ。二人が同じ空間に存在し、光り輝いている。それだけで世界は救われていたんだ。私は……なんて狭い世界で争っていたんだろう」
サキは静かに神棚の前で正座し、深く一礼した。
「お母さん、心配かけてごめんなさい。私、この本は心の金庫に封印して、明日から普通に学校に行くわ。あ、タジカラオ様、タンクトップ破いてすみませんでした」
「お、おう……分かればいいんだ……」
タジカラオは、あまりの急激な「賢者タイム」への移行に困惑しつつも、安堵の息をついた。
【エピローグ:家庭内のバグ】
高天原への帰り道。
「……納得がいかない。結局、彼女の主観は訂正されないままではないか」 オモイカネは、新調した予備の眼鏡をクイと上げながら不満げに呟く。 「私の睫毛の影に、不必要な意味を見出したままで……」
「いいじゃない、マジメ君! おかげで世界は平和になったんだし!」
ウズメはご機嫌で、手元にある「例の本」をパラパラと捲っている。
「これ、さっきサキちゃんから『布教用です』って貰っちゃった。ねえ、夜になったらこの18ページの『無理やり脱がされるポーズ』、再現してみる?」
「ウズメ!! 没収だ! それは論理的に、いや、神格的に破廉恥すぎる!」
「えー、いいじゃない! ほら、タジカラオの役は私がやるから!」
「君がやるのか!? ますます意味がわからない! ウズメカネ、助けてくれ!」
「パパ、諦めなよ。ママの『ノリ』は、僕の演算能力でも予測不能なんだから」
夕暮れの高天原を、九頭身の美男美女が追いかけっこをしながら駆けていく。 その後ろを、全てを悟ったクールな子供が、呆れたように、けれど少しだけ楽しそうに追いかけていった。
(第一話・完)
※全三話の短期集中連載です。
※注
本作は日本神話をモチーフとしていますが、最新AIとの対話から生まれた独自の解釈・演出に基づくフィクションです。神典の記述や特定の二次創作様式を忠実に再現したものではありません。自由な空想物語として、寛大な心でお楽しみください。
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