第13話
めろんが私を連れていったのは、
町を見渡せる小高い丘の上にある神社の、
そのまた少し山の上にある、
大きな木だった。
「どう思う?」
木に着くなりめろんは言った。
私は坂の上り通しで、
へとへとになっていて、
正直木どころじゃなかった。
「待って。疲れちゃったよめろん。」
私が息を切らしていると、めろんは
「このくらいで疲れたのか。」
と、少しだけ笑って言った。
そこにはしょうがないな、という気持ちや、
私に対する心配や
申し訳なさまでのニュアンスも含まれていた
ーー彼の、その美しい月の光の中に、
隠れるようにして、だが。
めろんは私に
そばにあるベンチに座るよう促すと、
離れたところにある自動販売機から
サイダーを買ってきて、
「ん。」
とぶっきらぼうに渡してくれた。
私はそれを
「ありがとう。」
と言って心底ありがたく受け取った。
子どもに気を遣わせて
ジュースをおごらせてしまうなんて、
と思う一方、
この光の持ち主たちはみんなこうなんだな、
と微笑ましく嬉しく思ったりもした。
私がサイダーを飲んで落ち着くまで、
めろんは急かさずに待ってくれていた。
愛南もめろんも、
一見クールだったり
ぶっきらぼうなところも似ているけれど、
こういう優しいところもそっくりだな、
と思った。
愛南と卒業式で別れたあの日以来、
誰かといてこんなに安心できるのは
久しぶりだった。
めろんの発しているオレンジの光は、
一筋のサファイアのような冷たさや
鋭さのようなものはあったものの、
側にいると心の奥までゆっくり
その光に満たされて
あたたまっていくようで、
とても懐かしい感じがした。
とても空気が良い場所にある
温泉につかっているような、
寒い日にあたる
あたたかい焚火みたいな感じがした。
私はめろんの横で、とても安心して安らぎを感じることが出来た。
私がサイダーを飲み終わり、
息が整ってくると、
めろんはだいじょうぶか、と小さく聞いた。
それから、
「これさ、何の木だと思う。」
と言った。
私はベンチから改めて木の方に視線をやってみたけれど、木の種類を見分ける力なんて持っていない。
私が黙って首をかしげている様子を見て、
めろんは
「これさ、桜の木なんだ。」
と続けた。
私は
「へえ、そうなんだ。こんなところに桜の木があるの、知らなかった。桜って花が咲いてない時は、案外分かんなかったりするよね。」
と言った。
めろんは適当に頷くと、
「この桜の木、今年咲かなかったんだ。」
と言った。
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