過去の殺人の記憶に苛まれる主人公と、彼のために永遠を捨てた「元天使」の少女との交流を描くサスペンス・ファンタジーである。全体主義的な独裁政権下の古都を舞台に、プロパガンダと暗殺計画が交錯する重苦しい世界観が秀逸だ。一見無垢な少女の大人びた振る舞いや、主人公が抱く贖罪への渇望が、凄惨な過去と暗黒の未来への予感の中で、美しくも残酷に表現されている。ディストピアものや重厚な人間ドラマ、退廃的な愛の物語を好む読者におすすめできる