芽吹く

「丈の長いスカートを選んだのは失敗でしたかね…。」

先程まで水場ではしゃいでいた祥子は、少し濡れたスカートの裾を気にしている。普段表に出ない分、こういうところに来てテンションが上がったみたいだ。祥子をベンチに腰掛けさせて湿った足を拭いてやる。くすぐったそうに声を上げる祥子に少し悪戯がしたくなって足裏をスッと撫でる。

「…っ。騎士のそういう変態性は強制しなければいけませんね。」

「祥子だって偶に危うい時があるだろう?」

割合で言うと九割は祥子からそういうアプローチを受けている気がする。それでいて自分は未だに清純なイメージを保っていると思い込んでいる節がある。

「ま、そういうところも悪くないと思うけどね。」

「なっ、騎士から見て私はどんな女に見えているんですか?なんだか不服な気分ですっ。」

眉間を寄せて頬を膨らませる祥子に少し噴き出してしまって、さらにむくれてしまった祥子を何とか宥める。拭き終わったタオルを畳んでバッグにしまい、祥子の横に腰掛ける。木漏れ日に目を閉じて風を感じる。周囲に人気はなく、隣にいる祥子の吐息もはっきりと聞こえる。

「ねぇ騎士?」

祥子が僕の手に自らの手を重ねてきた。それと同時に僕の耳元に柔らかい吐息がかかる。

「どうしたの?」

「…幸せです。」

噛み締めるように、確認するように、抱きしめるように呟かれたその言葉に、言葉なき同意をする。傍から見れば不思議かもしれないが、深く繋がった人にこうやって幸せというものを確認してもらうのは心から震えるような快感を伴う。

「これからもそう思ってもらえるように努力するよ。」

何度繰り返したかもわからない儀礼的な決意表明。くどいかもしれないが、すぐに不安を感じてしまう祥子には徹底的な忠誠を誓わないとすぐに彼女の不安は膨れてしまう。それは普通に考えてみれば面倒な性質なんだろうけど、今の僕には彼女が施した麻酔のような感情が溢れかえっている。それはいつか解けるものかもしれないし、いつまでも解けない呪いのようなものかもしれない。でも今の僕はそれを受け入れている。

「ねぇ、騎士?」

「…どうしたの?」

揺らめく微睡の中に水滴がほとほと落ちていく。深い所まで一緒に落ちていった僕らの意識はどこか繋がり始めた気がした。

「私、お休みが開けたら学校へ行きます。」

どこかで花が開く予感を感じていた。だって彼女は僕と初めて会った時より綺麗になっているのだから。

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なぜか学校一の美少女と呼ばれることになってしまった普通の引きこもりを何とか普通の女の子に戻さなくてはいけなくなった件。 ズッキーニ @lifework101

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