【カミサマ】 特定二級神格「変枵神」
〇表面上の扱い
伯楽院を開いた僧侶によって封印された個体で、二級というかなりの強さを秘めている。
行使する権能は『変』と『枵』の2つとされ、その性質より唐櫃には特別堅牢な結界処理が施されている。
記録によれば、『変』の能力によって日本人の日本人としての性質が変貌したとされる。しかしその性質が何かは判明しておらず、裏付けるものも見つかっていないことから、記録した僧侶の過失か、あるいは副次的に隠蔽性を持つ能力だと考えられている。
『枵』については一切不明である。
しかし封印の際、天級神格を数体投入した記録があることから、強力な攻撃手段である可能性が高いとされている。
能力と同様に、その姿に関しても詳細が不明である。唯一の言及である『極東ノ伯楽ノ記述』によれば、それは白き異形の獣とされるが、その記述にだけ何故か書き換えられた痕跡が見られるのが不可解だ。
また、伯楽院当主は28日毎に1度、当該唐櫃の結界に特殊な効果を付加しなければならず、それが絶えれば封印は著しく緩和されるという。
この付加には神器系神格の運用が必要不可欠である上に、それには多額の費用がかかることが課題とされているが、代替案として有力なものがないのが実状である。
〇当主の認識
上記の解説は全て 虚偽 である。
変枵神の異能力について判明していることは皆無であり、上記の『変』と『枵』は僧侶の考案した架空の能力である。
伯楽院は変枵神の鑑定に 失敗 している。
変枵神は 天級相当 と目されている。
今はただ御神体の口腔内に封じられており、その力は完全に無効化されていると思われる。
御神体の口に嵌め込まれた球体は、年々その黒さを増している。
現在は可視光の98.8291%を吸収している。
伯楽院当主は代々、変枵神への対応を模索してきたが、現在までの成果は皆無である。
当主は混乱を防ぐため、御神体に関するほとんどの情報を隠蔽し、その上で変枵神に対する無意味な封印の儀を続けている。
神格鑑定局を通じて得た他国の情報を鑑みても、対策を講じることは不可能であると、現当主は判断を下した。
150年以上に及ぶ伯楽院の活動の成果をもってしても、近づく変枵神の解放を止める手立ては存在しない。
2023年12月27日。
伯楽院現当主──
『極東ノ伯楽ノ記述』によれば、肉体を手にした刎剴は、全盛期の力を失っているという。
よって再封印は不可能だと思われる。
〇明かされない事実
変枵神の起源は、日本神話に描かれる『岩戸隠れ』にまで遡る。
天岩戸に身を隠した天照大御神を誘い出すために天鈿女命が放った一言──「貴方様よりも貴い神が現れました」──本来ならそれは、天照大御神を岩戸から出させるための嘘だ。
しかし、変枵神は自身の権能で、その嘘を真へと変換した。
天照大御神よりも貴い神──その存在に自らを据えるよう、現実世界を書き変えてしまったのだ。自身の存在しない状態で自身を生み出すその技能は『変』。そして嘘から生まれた、空っぽな自分そのものこそが『枵』である。
天照大御神が天鈿女命の嘘を信じて天岩戸から出た際、天岩戸の中に自らを生み出した変枵神。太陽神をも凌ぐであろう自身の存在を見せつけるために、変枵神も天岩戸から出ようと動く。しかし、そこで布刀玉命が、天岩戸を注連縄で封じてしまう。
そうして変枵神は、生まれたほぼその瞬間に、天岩戸に封印されたのだった。
長い年月が経ち、やがて天岩戸から解放された変枵神は、己の力を見せつけるべく日本を暴れて回っていた。そんなある時、ひとりの僧侶が多くのカミサマを率いて、変枵神の封印に乗り出した。
これが、伯楽院をひらいた僧侶の、最後の活動であった──。
変枵神の姿は天照大御神によく似ている。天鈿女命が指した貴い神とは、鏡に映った天照大御神のことだったからだ。
差違といえば、男神か女神か判別のつかない中性的な顔立ちと、全体的に色彩に乏しいというところだろう。
それが現在では、御神体の口腔内に封印されている。
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