倶生神の札 一

 一、金の札


このフダに、あったことをおはなししなさいって、

だいおーがいうので、します。

おはなしすると、なくならないし、

なくしても、おもいだせるからって、だいおーはいいます。

わからないけれど、だいおーにいわれたので、おはなしします。


ぼくたちは、エンマだいおーといっしょにいます。

ぼくたちにそっくりなおにいちゃんもいます。

おにいちゃんは、サイキン、いっしょにいます。

サイキンというのは、イマとか、コンドとかじゃなくて、

マエとか、ソノマエとかです。

むずかしいことは、オウマにきかないとわかりません。

わからないけれど、おにいちゃんはすきです。

だいおーも、オウマも、おにいちゃんがすきっていいます。


おにいちゃんは、おでかけします。

だいおーは、おでかけがすきじゃないです。

すきじゃないけれど、おにいちゃんがおでかけするのはいいって、

だいおーはいいます。


だいおーは、おにいちゃんと、ふたりでおはなしします。

つまらないけれど、きょうは、オウマがトカゲであそんでいいっていうので、

それであそびます。

でも、もうトカゲはいないです。


オウマに、ふたりがなにをはなしているのかききます。

ぼくはミミがわるいし、キオクもわるいけれど、

オウマはミミがいいし、いろんなこともわかるからです。


 二、銀の札


(静かな扉の開閉音)


ただ今戻りました。


成果はあったのか。


まだ直接関係のある話はつかめていないのですが……

星天様の見立てが失敗したというお話を、水天様より伺いました。


それは関係ないだろう。


しかし、星を守る天ですから……


関係がないと云っている。


はあ…… そう、ですかね……


(短いため息)


他に話のないのなら、もう切り上げるが。


あ、待ってください。えっと…… 


(幽かな衣擦れの音)


……そ、そうだ。鬼灯商店街に、星の香りがする香を売っている店があるそうです。

もしかしたら、その店が関係あるかもしれません。


そうか。店は見つかったのか。


いえ、それらしい店は見つけられませんでした。ただの噂なのかもしれません。


星を香にして売るなんてことは、冥界に暮らす鬼たちの秩序に反する行為だ。

がれきの城の奴らが黙って見過ごすわけがない。


がれきの城?


魔衆を祓い、冥界の秩序を守る退魔衆と、その総帥たる天部ががれきの城にいる。

そいつらに、香屋の話を聞いてみたらどうだ。


そう、ですね…… そうします。


(無音)


どうした。

何か、気にかかることでもあったか。


えっ…… ええと……


(わずかに息を呑む音)


あの、閻魔様……

街で…… 聞いたんです、双子の話を。


双子は、冥界では善くない存在だと…… 禍を呼ぶと……

でも、そんなことは……


(短いため息)


双子は、ここでは忌まれる存在だ。

あいつらはこの王宮の前に棄てられていたんだ。さしずめ、もてあました鬼が棄てた子鬼だろう。

放っておけば、魔衆に転ずるか、鬼たちに処分されていただろう。

だから私が拾って配下にした。紋を与えれば鬼たちも簡単には手出しができない。


紋の守護があるのなら、あの子たちも街へ行けるのでは。

せめて、街に遊びに行くくらいはさせても良いではないですか。


行かせてどうする。嫌な思いをするのはあの双子だ。

司命はともかく、司録は魔衆の中でも特に忌まれる黒肌の夜叉に似ている。

倶にはもちろんのこと、特に司録は街には出せない。これは、どうすることもできないことだ。


(蝶のはためき消えゆく音)

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