数字(ログ)は嘘をつかない 〜無能だと追放された鑑定士、実は国家予算を視ていた。粉飾まみれの公爵領が崩壊する中、僕は隣国で「聖計者」として成り上がる〜
第14話:指先一つの人員整理(エグゼクティブ・リストラ)
第14話:指先一つの人員整理(エグゼクティブ・リストラ)
玉座の間は、かつてない静寂に包まれていた。
国王が署名した「譲渡契約書」を手に、リヒトは居並ぶ大臣たちを一人ずつ「鑑定」していく。
「な、何をジロジロ見ている! 貴様のような若造が、この国の伝統ある政務を司れると思うなよ!」
声を上げたのは、軍務大臣の老侯爵だ。彼はリヒトを威圧するように一歩踏み出す。だが、リヒトの瞳には彼の「余命」ではなく「余罪」が数字で溢れていた。
【個体名:ガルドス・軍務大臣】
【軍事予算着服:累計4億5,000万エリス】
【武器横流し先:敵対国】
「ガルドス閣下。伝統、ですか。……あなたが敵国に売り払った『王都防衛用魔導砲』のシリアルナンバー、ここで読み上げてもよろしいですか?」
「なっ……! なぜそれを!」
「鑑定すれば、鉄の一片にまで履歴(ログ)は残っています。……衛兵。この男を、国家反逆罪で即刻拘束。資産はすべて没収し、兵士たちの未払い給与に充ててください」
リヒトの言葉に、これまで給料を止められていた兵士たちが、ギラついた目でガルドスを取り押さえる。
「次。財務大臣。……あなたが『紛失した』と言い張っている金塊30キロ、自宅の地下室の偽壁の中にありますね? 鑑定結果、今朝の湿度で金塊がわずかに膨張し、壁にヒビが入っています」
「ひ、ひぃぃっ!」
財務大臣がその場に膝をつく。リヒトの手元にある帳簿が、次々と黒字(適正)へと書き換えられていく。
「リヒト……本当に全員の隠し事が見えるのね」
クロエが戦慄しながら呟く。リヒトは事務的にペンを動かし、空席になった椅子に、あらかじめ用意していた「実務能力だけが高い下級役人」たちのリストを書き込んだ。
「能力(スキル)はあっても、家柄(ステータス)のせいで冷遇されていた者たちです。彼らを適正な給与で登用すれば、この国の生産性は300%向上します」
わずか一時間。
王国の最高意思決定機関は、リヒトの指先一つで「腐敗した貴族」から「効率重視の官僚組織」へと作り替えられた。
「……さて。国内の『ゴミ』は片付きました。ですが、クロエさん。外のハイエナたちが、この混乱を逃すはずがありません」
リヒトの視線が、遥か国境の向こう側――軍事大国として知られる帝国へと向けられた。
帝国の頭上には、巨大な赤い数字が浮かんでいる。
【帝国軍:侵攻開始まで残り48時間】
【予測損害:王都壊滅】
「……買い取ったばかりの『資産』を、燃やさせるわけにはいきませんからね」
リヒトは、王冠よりも重い「CEOの印章」をデスクに置き、次なる戦場――外交交渉という名の「合併(M&A)」へと駒を進めた。
【王国再建率:15%】
【次なる敵:軍事大国・帝国】
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