数字(ログ)は嘘をつかない 〜無能だと追放された鑑定士、実は国家予算を視ていた。粉飾まみれの公爵領が崩壊する中、僕は隣国で「聖計者」として成り上がる〜
第30話:海商王の降伏と合併(マージ・アンド・アクイジション)
第30話:海商王の降伏と合併(マージ・アンド・アクイジション)
ついに、大陸横断鉄道の最後の一本が打ち込まれた。
鉄の路は西の果て、海を臨む港湾都市へと到達する。そこは、海商王ドレイクが海上封鎖の拠点としていた場所の目の前だった。
「リヒト様……見てください! 汽笛の音を聞いて、ドレイクの艦隊がざわついています!」
クロエが指差す先、水平線にはドレイクの巨大なガレオン船が並んでいた。しかし、かつての威圧感はない。三ヶ月に及ぶ「無益な封鎖」により、船底にはフジツボがこびり付き、乗組員たちは深刻な食料不足と給与未払いで疲弊しきっていた。
「……鑑定。ドレイク艦隊の資産価値、最盛期の10%以下。……もはや維持費そのものが負債ですね」
リヒトは港の突堤に立ち、ドレイクへ最後通牒となる信号を送った。
数時間後、ボロボロの小舟で現れたドレイクは、リヒトの前に立つなり力なく笑った。
「……完敗だ。塩も鉄も、あんたの『鉄の路』が安値で運び始めやがった。海を塞いだところで、誰も見向きもしねえ。……俺の船は今や、ただの浮かぶ粗大ゴミだ」
「ドレイク閣下。僕はあなたの艦隊を沈めるつもりはありません。……むしろ、買い取りたい(バイアウト)」
「……買い取るだと?」
「ええ。鉄道で運んできた物資を、今度はあなたの船でさらに遠い大陸や島々へ運ぶ。……海と陸を繋げば、物流の効率はさらに倍増する。ドレイク艦隊を『リヒト・ロジスティクス』の海上部門として吸収合併(M&A)したいんです」
リヒトは、ドレイクに「再雇用」の契約書を差し出した。
【案件:ドレイク商会の吸収合併】
【条件:負債の肩代わり、ならびにドレイクを海上特区長に任命】
【結果:大陸・海洋の全物流網の統一】
ドレイクは呆然とした後、豪快に笑い飛ばしてペンを取った。
「神に祈るより、あんたの数字に乗る方が長生きできそうだ」。
ここに、大陸を脅かした海上封鎖は終わり、世界は一つの巨大な経済圏へと統合された。
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