第3話 計算機の仕組み

「どんな仕組みなの? ゴーレム生成で計算機は無理でしょ」

「まず、2進数。0と1。これは解るよな?」


「2進数は知らなかったけど0と1は解る」

「0と1しか使えないのが2進数」


「言葉は解るけど……意味が……」

「2は2進数だと、10。3は2進数で11」


 そして、俺は片手の指だけで31まで数えてみせた。

 31は2進数で11111だ。

 5本の指で足りる。


「えっ、片手で数えられるのは5までだと思ってた。凄すぎ! リット凄い!」

「こんなの初歩だよ。次にゴーレムだ。ゴーレムはAI搭載じゃない」


「えっ、AランクのAとIランクのIで何の意味が」


 AIはアルファベットだからな。

 現地語の文字に当て嵌めたんじゃ意味が通らない。

 現地語だと。


「インテリジェンスアイテムじゃないってこと。スキルがゴーレムの中に動作手順を刻み込む。だから、分岐の判断はできるけど、手順にない動作は無理。しかもレベルが低いと、この動作手順の数と種類が少ない」

「言ってる言葉は理解できるけど、無理。熱が出そう。私って馬鹿なの?」


 スキルがプログラムを作る生成AIで、作られたプログラムをゴーレムに書き込む。

 レベルが低いとライブラリの種類が少ない。

 俺の推測ではこんなイメージだ。

 リットの今までの出来事に当て嵌めると、間違った推測ではないと思う。


「ゴーレムは融通が利かないけど、物理的な誤動作以外では間違えたりしないってことだ」

「インテリジェンスアイテムが間違えるのは知ってる。物語のいくつかはそうだから。人間に近くなると間違えるのね。ゴーレムは水車に近いってこと? 部品が壊れたりしなければ、変な動きはしないってことね」


「偉いぞ、ポップ。その理解で合っている」

「馬鹿にしないで!」


「2進数に話を戻すぞ。2進数は信号が2通りしかない。シンプルだ。デジタルの基礎はアンド、オア、ノットこれしかない。アンドは2つの信号が1だと1を返す。オアは2つの信号のどちらかが1だと1を返す。ノットは入力が一本だが、入って来た信号と逆の信号を返す」


 デジタルはこの世界にはない言葉なので、現地語でそれらしい造語を作った。

 アンド、オア、ノットはある。

 かつ、または、否定の古語だ。

 古語でかなりメジャーな言葉だ。


「難しい」


 俺はアンド、オア、ノットの入力と出力の表を書いた。


アンド

 0と0だと0になる。

 0と1だと0になる。

 1と0だと0になる。

 1と1だと1になる。


 簡単に覚えるなら掛け算。


オア

 0と0だと0になる。

 0と1だと1になる。

 1と0だと1になる。

 1と1だと1になる。


 簡単に覚えるならカンスト1の足し算。


ノット

 0だと1になる。

 1だと0になる。


 これは逆ね。


「こんな感じだ」

「各4種類しかないの。ノットは2種類」


「だからゴーレムも問題なく動作する。エンコーダとデコーダは2進数と10進数の変換。これも10種類で済むから、これぐらいはレベル1でも、ゴーレムに手順を刻み込める」

「何か難しい」


 0から9の2進数の変換表を書いた。


10進数 2進数

   0 0000

   1 0001

   2 0010

   3 0011

   4 0100

   5 0101

   6 0110

   7 0111

   8 1000

   9 1001


もっと解り易くすると。


 0=0+0+0+0

 1=0+0+0+1

 2=0+0+2+0

 3=0+0+2+1

 4=0+4+0+0

 5=0+4+0+1

 6=0+4+2+0

 7=0+4+2+1

 8=8+0+0+0

 9=8+0+0+1


「たったこれだけ」

「基本はな。表にすると良く解る。実際は2進数から10進数の変換は桁数が大きくなるとむずかしくなるがな。加算器に行くか」


 アンドは『&』、オア『|』、ノット『!』


 1桁目 ((!信号1)&信号2)|(信号1&(!信号2))

 2桁目 信号1&信号2


「えっと、これで計算できるの?」

「じゃ、やってみるぞ。2進数の0足す1」


 結果はこれ。


 1桁目 1

 2桁目 0


「どうだ?」

「うそ! 計算できてる! あんな簡単な仕組みしか使ってないのに!」


「もう一回やってみるぞ。今回は2進数の1足す1」


 結果はこれ。


 1桁目 0

 2桁目 1


「うん、桁上がりができてる! これを使えば、何桁でも可能ってこと?」

「まあな」


 実際は桁が増えるとちょい複雑だけど。


「リット天才!」

「お馬鹿ゴーレムでも計算できるってわけだ。確かに10進数の1桁の足し算だったらゴーレムでも計算できるよ。10×10パターンを覚えることができたらね。レベル1では無理だけど。でも桁数が増えるとレベル10ぐらいでもどうなるか。パターン数では対応できなくなる」


「本当に凄い。1個のゴーレムは大したことはやってないのにね。ゴーレム同士ってコミュニケーションできるのね」

「あるかないかの情報だけだけどね。それとさっきの計算は2進数一桁だ。二桁同士になると複雑になる。三桁以上は繰り返しパターンだが」


 コミュニケーションについてはコマンドのいくつかを決めておけば可能ではあるが、レベル1ではどうしようもない。


 さて、職人を探すか。

 金がないからな。

 作戦を考えないと。

 俺みたいに底辺な奴が良い。

 そんでもって、誠実な奴だ。


 作戦はこうだな。

 工房で金がないと言って、見習いにやらせたいと言う。

 見習いに見積もりを言わせて、折り合いが付かないと言って去ろうとする。

 鉄くずの入った財布をわざと落として、背を向ける。

 中を見ずに落としましたよって言った奴を採用だ。

 計算機の存在がばれるとろくなことがない。

 今の俺は弱いからな。

 だから騙しても確かめたい。

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