第113話 夢を見た

 「…………………………綺麗だ。死ぬ時は、こんな綺麗なものが見えるのか。」

「これは……魔力……………それも超特大の。」


一頭の龍と共に、四方を見渡す。全面、極彩色の空間である。


「幻影といえど、私の魔力をあれだけ打ち込まれたのです。それも、膨大な魔力を保有する二人が。このくらい見えるでしょう。」

「「…………………………!!!」」


目の前に立つ男。間違い無い、ジジイだ。


「「じゃあ本当に死んだのか。」」


あぁ、納得してしまった。


「いや、終わってはおりませんぞ。あくまで、私の魔力総量は人間の範疇。得物とて、ただのミスリルの杭。それこそ、三日三晩刺し続けないと殺すことはできません。意識を失っただけです。」

「「じゃあ……………。」」

「えぇ、私はただの記憶ですとも。貴方達のね。ただ、一番印象の強いのが私だから、ここに現れているだけです。素直に嬉しいですがね。」

「「…………………………。」」

「二人とも、ご存知でしょう。私の夢を。より美しい魔力を、この目に焼き付けることと。そして、同じ物を貴方達に見せてあげたいと。でも、不十分です。二人には、まだまだ可能性がある。まだまだ先に進める。もっと、もっと、もっと!!!美しいものを見てください。そして、もしあの世なんてふざけたものが本当にあるのなら、そこにいる本物の私に、土産話を。それが私の楽しみですので。では。」

「あ、ちょっと!!!」

「おい爺!!!待て!!!まだ……………!!!」


ジジイの体が、霧散し始める。これは夢だ。夢は、醒めた直後は鮮烈に残る。しかし、ふと振り返った瞬間には、すべて消えているものだ。


「所詮は記憶。この私も、すぐに無に還る。ただ、最後ですから、本物が言いそうな言葉を遺しましょう。」


既にその身は、半分が消えている。もう、遺せる言葉も多くはない。


「星を撃ち落とし、星を抱いていだいて来た。彼方あなたの空に、古き星を遺す。」


彼らしい言葉を並べる。が、一瞬沈黙する。そして、完全に消える直前に。


「耀け………………………………!!!」



 「ハッ!!!」


全身に奔る灼熱感と共に、目が醒める。


「感謝するぞ、爺!!!」


全身血に塗れ、穴だらけにされたドラモンドが、跳ね起き、ジジイの幻影を蹴り飛ばす!!!ダメージは通らなかったが、距離ができた。


「シィィィィ……………極限まで練り込み、限界以上の出力を出す。」

(だろ。)

(勿論。)


ドラモンドの全身を、猛烈な速度で魔力が駆け巡る!!!全身の傷口から血と魔力が噴き出し、そして再生する!!!


「「魔力を絡めて再生を阻害されたなら。」」


地を踏み、一気に前方へ滑り込む!!!


「「大出力で噴射!!!浄化すればいい!!!」」


いつものドラモンドが帰ってきた!!!双眼はガンギマリ、口角は裂けんばかりにつり上がり、興奮のあまり全身から殺気が噴き出す!!!


「……………。」


ドラモンド渾身の正拳突きを、同じく正拳突きで潰す!!!ドラモンドの骨が、肘の関節まで壊れる!!!が、幻影の拳にも、少しだけヒビが入った!!!


「できるではないか、相打ち。」


全体重、大出力の魔力を乗せ、頭突きをブチ込む!!!双方の額から、血が噴き出す!!!


「ハハハハハハハハ!!!不覚にも恐怖してしまった!!!が、思い出したぞ!!!死線の魔力、その輝きを!!!」


灰色の世界で、二人、いや、三人の周りだけが、それまでの世界の億千万倍の輝きを見せる!!!


「程度?知らん!!!もっと魅せろやァァァァ!!!」


全力のストレート!!!意思を持たないはずの幻影も、まったく同じ技で応える!!!


「「破ァァァァッッッ!!!」」

「…………………………!!!」


同時!!!同時に両者の右腕が、粉砕する!!!赤い鮮血の代わりに、虹色よりも更に鮮やな飛沫が舞う!!!その輝きは、陽火の硝子!!!その輝きは、億年を内包する宝玉!!!その輝きは、万生が行き着く大海の飛沫!!!


「「この輝きはァァァ!!!我等が命の証明!!!!!!」」


再び!!!両者の拳がぶつかる!!!澄み渡った飛沫が舞う!!!


「「この輝きはァァァ!!!我等が欲望の純度ォォォ!!!」」


第三撃!!!双方共に選択するは、総てを賭けた体当たり!!!


「「この輝きは!!!貴方が我等に遺したもの!!!今、最大の敬意と感謝を!!!!!!アラスデア・アストラ・ウォーカー!!!!!!」」

「………………………………………!!!!!!」


光など、絶対に宿らぬ筈の双眼が、煌然と煌く!!!ドラモンドの無尽蔵の輝きと、アラスデアの清澄たる輝きが、ぶつかる!!!!!!永くも短い歩みの果てに、ようやく手にした輝きが!!!溢れる若さと溢れる欲望が生み出す、豪放たる輝きが!!!!!!永遠にも思える無から救い出され、ようやく掴んだ輝きが!!!!!!!!!この瞬間に炸裂する!!!!!!


「「「…………………………!!!」」」


最早、言葉にできぬ輝き。その光の大海に呑まれ、すべてを委ね、そして、二人立つはドラモンド。素晴らしい笑顔である!!!


「「万感の想いはある。が、これだけは伝えよう。ありがとう!!!!!!我等が盟友よ!!!!!!」」

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