紀元前から流れる河、ティグリス。
羊飼いの少年は、河のほとりで「ユーフラテス」と名乗る謎の「女性」に出会う。
草と岩が続く岸辺で育まれたのは、静かで鮮烈な愛の物語。
驚くべきは、本作が多数のお題を組み合わせて書かれたということ。
4500文字弱の物語において、その数、なんと19題。
制約を感じさせないどころか、散りばめられた言葉たちが、荒野の熱や涼やかな風、そして黄金に輝く宇宙船へと鮮やかに姿を変えていく。
この緻密な構成力と想像力には脱帽するほかありません。
ユーフラテスの孤独と、それを受け入れ、一生をかけて愛し抜くと誓ったはずの青年の献身。
彼らだけではなく、まわりに生きる人々の人生もまた、悠久の河の流れにのって通り過ぎていきます。
短編とは思えないほどのスケール感と、一文字一文字が宝石のように磨かれた文体。
叙情的な物語を求めるすべての方に、自信を持っておすすめしたい名作です。