美少女なのにチート人型兵器に転生してしまったので、現代ダンジョンで成り上がる。
久我悠真
一章 帰ってきた。
第1話 誰がフロアボスだって?
早瀬ミカが地球に戻ると、世界各地でダンジョンができていた。
(うーん。久しぶりに帰ってみたら、変なものができているよ)
この二年間、ミカは地球外生命体に誘拐されていたのだ。
しかも誘拐の転送中による事故で肉体が消滅したため、魂だけサルベージされ、事象零式人型決戦兵器【Ω:弐式】に転生させられてしまった。
端的にいうと、チート級の人型兵器に。
とはいえミカは、いつまでもネチネチ言わない性格。心を込めて謝罪されたら、気持ちよく許してしまう。
──(まぁ、いいじゃないか。人型兵器でも、漫画は読めるさ)
こうしてミカは地球人代表となり、銀河評議会なんかにも出席。数多の地球外知的生命体の前で、スピーチまでした。
それで出た結論が、地球人類の知能レベルはまだ低いので、あと10万年はそっとしておこうというもの。
地球人類がバカ扱いされたのは、別にミカのせいではない、たぶん。
そして二年が経ち、役目を終えたミカは、地球に帰されたのだった。
この虚数型複合装甲で覆われた機械の身体で。
事象零式人型決戦兵器【Ω:弐式】。
全高は5メートル。
人型だが関節部分に物理的な結合はなく、重力場で接続している。
背中からは凝縮した暗黒物質による13枚の翼が広がり、もちろん好きに折り畳める。
そして頭部には愛嬌のあるデュアルアイがある。
というわけで宇宙空間から、劇的、かつ緩やかに地球へと降下したというのに。
いまの地球人は誰も空を見上げていないようだ。
地底にできたダンジョンに夢中らしいので。
(ガン無視って。なんだか、白けるなぁ)
ダンジョンを造ったのは異世界の神々らしい。
銀河評議会に出た身としては、いまどき神とは遅れている、というのがミカの率直な感想だが。
とりあえず地元の埼玉はR町近くにできたダンジョンに、そのまま降りてみることにした。
このダンジョンの入り口は、大きな穴だった。他のダンジョンも、こんな素っ気ない入り口なのだろうか?
ダンジョン内に入ったとたん、何やら外部からの干渉を受ける。
どうやらダンジョンそのものが、レベルとかステータスとかスキルとかを勝手に付与しようとしてきているらしい。
「どうされますか、ミカ様?」
という、優しい女性の声がした。
これは事象零式人型決戦兵器【Ω:弐式】に標準装備されている超AIである櫻子さん。
櫻子と命名したのはミカだが。
もちろん超AIなので、自我を持っている。
しかも、ミカがどんなワガママを言っても怒らないし、その上でやんわりと軌道修正までしてくれる。
まさしく『お姉さん』。
「そうだね。まぁ、悪影響がないなら受け入れてあげよう」
異界のマルウェアが仕込まれてないことを櫻子に確認してもらってから、表示してみると。
名前:????
職業:????
Lv:-99999???
HP:-9999???
MP:-9999???
STR:-9999???
VIT:-9999???
INT:-9999???
RES:-9999???
AGI:-9999???
DEX:-9999???
LUK:-9999???
固有スキル:≪台所掃除≫
装備:????
所持金:9999999999999999999999999円
「なんかレベルとステータスおかしくない? マイナス9999って、なんだそれ? というか、固有スキル≪台所掃除≫ってバカにしてる?」
「ミカ様は人間ではなく、事象零式人型決戦兵器【Ω:弐式】ですので。つまり、ダンジョン側の理解を超越した存在。そのためステータス付与時に、バグってしまったのでしょう」
しかしバグったからといって、スキル≪台所掃除≫はないだろうに。
「所持金もバグだね。わたしキャトられたとき、財布に3500円しかなかったもの」
「もしかすると事象零式人型決戦兵器【Ω:弐式】の価値を、この日本の金銭的価値に落とし込もうとしたのかもしれませんね」
なるほど、とミカが感心していると、前方から誰かやってきた。
人間たちだ。
二年ぶりの地球人。懐かしさがこみ上げる。
彼らは剣や槍などで武装していた。銃火器は持ち込めないダンジョンルールでもあるのだろうか。
とにかくミカは、ホッとした気持ちで、
「はじめまして、埼玉生まれの早瀬ミカです!」
と挨拶した、つもりだったが。
「バガドルガメハガボロズガメンガーーーー!」
と発声してしまう。
(あれ? これは銀河評議会の標準言語だ。しまった。事象零式人型決戦兵器【Ω:弐式】の発声言語を日本語にしてなかった)
人間たちが何やら話し出す。
「おい、こいつ、なんだ!? なんで第一階層なのに、ゴブリン以外がいるんだ?」
「知るかよ! きっと、あれじゃねぇか? レアな出現モンスターってやつだ」
「まてよ。もしかするとフロアボスってやつかもしれねぇぞ」
「だとして、なんで機械っぽいんだよ?」
「知るか。東京ダンジョンの最終ボスは全身が霧のドラゴンだと聞くぞ。なら全身が機械っぽい魔物がいてもいいだろ」
「で、どうするんだよ?」
「フロアボスでも、たかだか第一階層だろ? 楽勝じゃね?」
「きっとレア度の高い素材を落とすぜ!」
「おい、コウジ、ちゃんと生配信してっか? おれたちの勇姿を世界に見せてやるぜ!」
見たところ、この人間たちは全員、男子高校生くらいだ。
ミカはやれやれと思った。
この年代の男子ときたら、女の子を前にして魔物扱いなんて。
その中の一人が近づいてきた。
「くらえ、クソモンスター! 必殺の《
その男子が装備していた槍が炎に包まれる。
そして素早く突かれる。
その火炎の穂先がミカの身体、つまり事象零式人型決戦兵器【Ω:弐式】の虚数装甲に当たる──
ことはない。
虚数領域を越える物理攻撃は存在しないので。
「こら、やめなさい。女の子に向かって、何をするの?」
右腕を軽く振るった、
──ところ、その男子高校生の全身をぐちゃりと圧し潰してしまった。うっかり蟻さんを踏んづけてしまったがごとく。
かくして炎槍で唐突に攻撃してきた、失礼極まりない男子高校生は、
「あべつっ!」
という変な断末魔の悲鳴とともに、できたてのミンチと化したのだった。
「大変、櫻子さん! なんか、殺しちゃった!………」
「ご心配なく。いまのは正当防衛です、ミカさまは悪くありません」
「……過剰防衛ぽくなかった?」
「ご心配なく。いまのは正当防衛です、ミカさまは悪くありません」
「…………………櫻子さんって、わたしに甘すぎでは?」
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