伯爵家を追放された令嬢セラフィーナ。彼女に残されたのは、片田舎にある廃旅館「銀泉楼」の権利書だけだった。前世で経営コンサルタントだった彼女は、「自分の手で宿を作る」という夢に向かって旅館の再建へと踏み出す。
かつては湯治で栄えながら、源泉の減少とともに客足が遠のき、寂れてしまった温泉地を舞台に少女の夢が幕を開けます。
技術も資金も人手もない。そんなゼロからのスタートにもめげず、とにかく手足を動かしてデータを集め、地元の人々と交流を重ねる。頼れる仲間たちと出会い、ぶつかり合いながら、それぞれの夢を束ねて「みんなで宿を蘇らせる」という目標を共有していく一体感が心地良くて胸が温かくなります。
そして迎える最初のお客様。万全とは言えないながらも、上質な温泉、美味しい料理、綺麗な客室、そして雄大な景観。できるかぎりの精一杯のおもてなしに思わずじんわり。そうして初めての客からもらう感謝の言葉に打ち震えるセラフィーナの姿に、目頭が熱くなります。
物語が進むごとに新たな壁や課題が現れますが、そのたびに皆で知恵と力を出し合って乗り越えていく展開に引き込まれます。読めばきっと、この旅館の一員になりたくなる。旅館と共に人生も再生していく異世界再建ストーリーです。
(「やすらぎの湯」4選/文=愛咲優詩)