華やかなVtuberの世界を舞台にしながら、読後に胸に冷たいものが残る、とても印象的なサスペンス作品です。
物語は、人気Vtuberとして活躍していた妹を失った姉の視点で進んでいきます。SNSで拡散される断片的な情報や、無数の憶測。それらに触れながらも、姉だけが知っている本当の妹とのギャップが、静かに心を締めつけてきます。
特に魅力的なのは、派手な展開に頼らず、違和感を一つずつ丁寧に積み重ねていく構成です。何気ない日常の描写の中に潜むズレが、次第に不穏な輪郭を帯びていく過程は見事の一言です。
そして本作が描くのは、単なる事件の謎ではありません。人の「善意」や「思い込み」が、どこまで危ういものになり得るのか。そのテーマが、読後に強く残ります。
派手さではなく、リアルな恐怖や人間の心理に迫る作品を求めている方には、ぜひおすすめしたい一作です。読み終えたあと、きっと誰かに語りたくなります!
Vtuberのルルラリカル・ミルカが何者かに殺害された。ミルカの姉は、犯人を見つけるべく調査する。
人気のVtuberともなれば関係者、すなわち容疑者の数はとんでもないことになる。
人々は勝手に真相を想像するが、ミルカの「本当の姿」を知っていた姉は、その多くが全くの誤りであるとわかっていた。
なかなか見えてこない犯人像。そんな中、ミルカの部屋に違和感が……?
他人のことは、そう簡単にはわからない。
自分が嬉しいことをしてくれる人は、いい人に思える。下心があるかもしれないのに。
自分が嫌なことをする人は、嫌な人に思える。本当は自分の方が良くないことをしたのかもしれないのに。
自分に自分なりの「事情」があるように、他人にも他人なりの「事情」がある。
大切なことを訴えかける、そんな物語をどうぞ。
登録者50万人の女性Vtuberが配信中に殺害されるという、衝撃的な事件が発生した。
電子で象られた美少女の姿は「本体」の死とともに引き剝がされた。
痕跡の少なさから事件は難航し、全世界の視聴者たちがカラスのようについばんでゆく。
誰よりも彼女を知っている私は、調査を敢行する――
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この作品はミステリー、Vtuber殺人事件の解明が主軸にはなっているものの、ドキュメンタリーとしての側面もかなり強い。
被害者の生きざま。どう生きてきたのか。上澄みであろう登録者数にまで達した経緯。彼女がどこまでつぎ込んできたのか。
事件後の外野の熱意。彼らの活動は良くも悪くも踏み込んだものであり、読む者に複雑な印象を与えることだろう。
そして、主人公との関係性。彼女の覚悟を受け止め、信頼し、活動を見守ってきた様子もまた、喪失のやるせなさを一段と大きくする。
顛末も含め、読む者に揺さぶりをかけてくる一作。