学年随一の馬鹿女・降瀬至理が数学で突然100点を取った。一体何が起きているのか……?
本作では上記の非常に明快かつ不可解な謎が提示されます。推理の手掛かりも作中でフェアにばらまかれており、解決編ではポンと膝を打つこと必至でしょう。
また本作は「日常の謎」としての出来もさることながら、「青春小説」としての出来も一級品となっています。
主人公の「僕」こと新免は心の中に謎の暗黒を抱える人物。テストの謎が紐解かれていく過程でところどころ挟み込まれる性悪な描写に思わず惹き込まれます。探偵役の伊万里もかなり底意地の悪い性格をしており、ホームズとワトソンの新たなキャラ造形として大きな見所であると感じました。
暗示的に取り上げられる『檸檬』やラストのオトし方などなど、ミステリとしての謎・解決以外の部分にも工夫や仕掛けが凝らされていて素晴らしかったです。
主人公と同じクラスの降瀬至理という女生徒が数学のテストで百点を取り、周りを騒がせた。
彼女は一学期と二学期の数学の点数がクラスで一番低かったからだ。
主人公は彼女が不正をしてその点数を取ったのではないかと疑い、同じクラスの伊万里霧子という女性と降瀬がどのような手段で百点を取ったかを推理していく。
これはそういうミステリー作品だ。
仮説を一つ一つ立て、丁寧に検証しており、推理をする楽しさを本作では存分に味わうことができる。
また、本作はミステリーである他に純文学作品の性質が強くある。
梶井基次郎の『檸檬』が作中で話題に上り、本作の文章、また、登場人物の心情や関係性があの作品と深くリンクしている。
一人一人のキャラの心理が丁寧に描写されており、ただの推理小説では終わらない、深い読み心地をこの作品は味わわせてくれた。
最後まで読んで、私はこの作品がエゴイズムをテーマにしたものであると感じた。
文学とミステリー、両方を高いレベルで兼ね備えたこの傑作を多くの人に是非読んでいただきたく思う。