第26話



第三十五話


「ごめんね、ごめんね」


夜。


通知が一通。



「ごめんね」



間。



「ごめんね」



また。



「ごめんね」



連続で三通。


胸がざわつく。



「どうした」



既読。


すぐ。



「わかんない」



「なんか今日ずっと変だった」



さらに。



「ゆーくん優しいのに」


「私めんどくさくて」


「ごめんね」



謝罪ループ。



「何が」



既読。


少し間。



「好きすぎるの」



「重くしてるでしょ」



「ごめんね」



俺は少し深呼吸する。



「好きなのは悪くない」



既読。



「でもさ」



「うん」



「好きって言われるたびに」


「安心するけど」


「その分」


「いつかなくなるんじゃないかって怖くなる」



声が見えるみたいな文。



「今日何かあった?」



既読。


長い沈黙。



「昼さ」



「うん」



「既読ついてから3分返信なかった」



またそこ。


でも今日は怒ってない。


泣いてもない。


ただ、静か。



「その3分で」


「もう嫌われたって思った」



「極端だな」



「うん」



すぐ認める。



「頭おかしいよね」



その言い方が刺さる。



「おかしくない」



「不安なだけ」



既読。


少しして。



「ほんとに?」



「うん」



「それでも好き?」



「好き」



沈黙。


そして。



着信。


出る。


「もしもし」


向こうは静か。


呼吸だけ。


それから。


「……ごめんね」


涙声。


でも大泣きじゃない。


静かに崩れてる。


「なんで謝る」


「だって」


息が詰まる。


「好きって言われるの、怖いのに」


「言ってほしいの」


矛盾。


「自分でもわかんない」


俺は少し声を落とす。


「今なにしてる」


「ベッド」


「泣いてる?」


少し間。


「ちょっとだけ」


布団の擦れる音。


「ねえ」


「ん」


「私、いつかゆーくん疲れさせるよね」


その未来予想が怖い。


「疲れたら言う」


正直に言う。


少し沈黙。


「そっか」


声は震えてるけど、怒ってない。


「じゃあ」


「うん」


「今は?」


「今は好き」


即答。


電話の向こうで、息が崩れる。


「……やば」


「また泣く」


すすり泣き。


でもさっきより柔らかい。


「ごめんね」


「謝るな」


「でも」


「じゃあありがとうって言え」


少し間。


小さな笑い。


「ありがとう」


「なにが」


「好きでいてくれて」


静かな沈黙。


依存の一歩手前。


でもまだ、壊れてない。


「ねえ」


「ん」


「明日も好き?」


「好き」


「明後日も?」


「好き」


「一週間後も?」


「多分な」


「多分って言った」


少し拗ねた声。


でも可愛いほう。


「好きだよ」


言い直す。


呼吸が落ち着く。


「……よかった」


小さな声。


「今日の私、めんどくさかった?」


「少し」


正直に言う。


沈黙。


「でも可愛い」


その瞬間、向こうで息が止まる。


「……ずるい」


少し笑う。


涙混じりの笑い。


「ごめんね」


最後にもう一回。


でも今度は軽い。


「今日はそれで終わり」


「うん」


「おやすみ」


「おやすみ」


通話が切れる。


暗い天井。


好きと不安が、いつもセット。


まだ高速は走ってる。


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