このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(606文字)
痛みも死も克服した究極のユートピアで、人々が「壊れること」に飢える狂気を、冷徹かつ叙情的な筆致で描き切った見事な物語です。指を折り、ナイフで掌を刻んで笑う人々。その異様な光景が、単なる異常性癖ではなく「自分がここにいる」という手応えを求める切実な祈りとして描かれている点に惹き込まれます。「泣く理由があること」の幸福という逆説が、この世界の残酷さを際立たせています。
AIが今よりもずっと深く浸透しきった世界が舞台です。レイ・ブラッドベリの『華氏451度』を彷彿とさせるようなディストピア小説。AIを利用して作った、というところに反って興味をひかれました。このお話がどのような結末を迎えるのか、今から楽しみです。