狐、夜行を率いる(?)

 そんなわけで!

 色々決めて! 夜行デビュー戦が決まった!!

 やった~!! はやい!!


 あれから綾にーさんがぱぱーっと登録してくれたし。

 衣装は揉めたけど。ほんっとうに揉めたけど!!!

 俺がじゃんけんして勝ったから俺の案になったー!!

 皆似合ってる!!

 狐耳つき!! パーカー!!

 俺は黄色! 蓮先生は黒! 映澄師匠は青! 琉珀さんは白~!!

 あ~、ここに赤がいれば戦隊ものができた……ポーズとかね。もっと考えることもあったな!


「このせ、練習したこと覚えてるか?」

「れ、練習……?」

「あっ、これ覚えてない顔だ。蓮、絶対このせから離れないようにね」

「あー! やっぱり俺か! 映澄と琉珀は後ろから頼むぞ」

「まぁ、ほどほどに……」

「適当に弾くくらいは……」

「お、お前ら~!!」

「や、ちゃんと覚えてる! 俺は頑張って、燃やす!」


 ふ、不安しかない~!! って視線を向けてくる。

 ちゃんとやるよ~!!

 夜祭の控室で最後の打ち合わせ。がんばろー!!

 あっ、これ必要じゃん!


「ねー! これ掛け声とかしといたほうがよくない?」

「このせはしたいんだ」

「したい! しようぜ! 絶対いるだろー!」

「はー……仕方ない……」


 ん、と蓮先生が手を前に出した。俺もーってぺたっと重ねる。

 映澄師匠と琉珀さんも重ねてくれた。


「俺達は」

「小遣いと」

「ネット環境の為に――」


 物欲がすぎる! でもそれがいい!!


「がんばろー!!!」


 おー!!

 で、俺達は出場待機場所に……んんっ!?

 なんか……待機場所にいる他のチーム……強くない???


「……デビューの時ってさ……初出場チームばっかりになる……って……言ってなかった?」

「言ってた」

「言ってたな」

「……なんかもう、やらかされた気がする」


 ちらっと、皆で横を見る。


 今回の相手、そのいち!

 なんかやばそーな気配のするぱっと見は人妖チーム!

 ちらっと見える手には鱗っぽいのがある!

 強そう!!


 そのに!

 明らかに樹木と混ざってる!

 もうこれ妖だけど、それちょっと越えてるタイプだよな!?

 こっちみてにこってしてくれた! にこってかえしとこ!


 そしてそのさん!

 翼がある~……鴉天狗チーム!! この前夜祭で見たつよつよの白い人、いる!

 あきらかに、おかしい~!!!

 ひゃっ! ちらっとみたら白い人と目があった。でも、すぐ逸らされる。

 興味ないって感じだぁ! むー!


 どうみても初心者チームの集いじゃない!

 ねー!! 混ざるとこ間違えた感じしかない~!!!



 どぉん! どぉん!

 重たい音が始まりを告げる。


『今日の夜行は~! 皆様ご存じ! 上位夜行の樹美人チーム! いやー、黄色い歓声があがりますね~!』


 煙がチーム名を彩って、その姿を映しだす。

 特別席で、その様子を酒を飲みながら見上げるのは――付喪神の三人。


『最近上がってきたばかり、新進気鋭の龍流! 今回このチームは有利ですね~! だってご覧の通りですから!』


 今日の相手を見て三人は笑う。

 相性、悪そう。こりゃ分が悪いと。でもそれでいい。


『さらに! ここしばらく話題の中心! 鴉天狗たちの! 赤天鴉!!』


 上位に投げ込んでくれ、とはちょっとだけお願いしたが、そのめぐりかと笑いが止まらない。

 最初に遊ぶ夜祭にしては高いハードルが用意された。

 さてどう転ぶかと、大人は物見遊山。


『そして~~!! んっ!? えっ……ここ初顔じゃ……間違ってない? 間違ってない! なんかあるってことな!! ということだ~!!』


 デビュー戦でここに放り込まれるってどんな運! と実況が笑う。


『九十九ぷらすこん~!! ……ぷらすこんってなに?』


 ファンシーな字体で煙が描く。

 九十九ぷらすこん――それを字面で眺めた瞬間、三人は腹を抱えて笑いだした。

 ――結局、それかぁ!!



 開始! と――同時にっ!!!


「わああああああ!!!」

「っ!!」

「あっ!」

「わぁ」


 浮遊感。そのすぐあとに激突! IN 水!!


「ぶはっ! 水最悪すぎる! 映澄、琉珀!」

「こっちは大丈夫」


 ぱちゃぱちゃぱちゃ。


「俺もー……このせは?」


 ぱちゃぱちゃぱちゃ。


「おいパーカー浮いてんぞ!?」


 ぱちゃぱちゃぱちゃ。


「このせっ!?」


 ぱちゃぱちゃぱちゃ。

 慌てる声に、ここー! って頑張って前にいく。


「きゅー!!」

「このせ!? このっ……」


 ぱちゃぱちゃぱちゃ。


「このせ……」

「このせ……」


 ぱちゃぱちゃぱちゃ。

 びっくりして、狐になっちゃって!! 必死の狐かき!!

 蓮先生が無理すんな、って頭の上に乗せてくれた。ひ、ひとやすみ!


「ひぃ、たいへんなめに……」

「とりあえず足場だな。俺達置いといて、上で戦ってるから今のうちに、体勢整えようぜ」

「俺ら、あとでぺってできるって思われてるやつだよな~」

「だね。とりあえずあそこの石柱にしよっか」


 どこまでも水~! こんなとこにいきなり落とすなんてひどいことするなー!!

 ふんすふんす、鼻息も荒くなる。

 で、頭上で戦ってるから見つからないように、俺達は石柱の上に登っていく。

 地面に四足ついて、ふるるるって身震い。ちょっとすっきり!


「やっぱ鴉天狗は飛べるから有利だよな」

「糸引っかけて落とす? 白以外なら落とせるよ」

「いや、温存だろ。何もしなくても、鴉も落ちる」


 ほらあっち、と映澄師匠が指差す。

 途端、そこから水柱がいくつもあがった。細い線、頭上を飛ぶものたちを貫いて落とす。

 そして大きな波が水の上に樹木でつくられた足場を一気に押し流した。

 わー! すげー!!


『龍流の大津波!! 樹美人の足場を全部押し流した~!! 大津波にはさっき落ちた赤天鴉も飲み込まれてリタイア数人って感じですね~! でも頭の白羽がいますからね! と……初登場チームは? あれどこ?』


「ここー!」


 ぴょんぴょんと跳ねる。けど気付いてくれない!

 三人は、もう座って観戦してよ~って体勢になってる。座ってのんきに!!

 ねー! 俺達も混ざりにいこうよー!


「んー、行ってもいいけどもうちょっと待ってからだよ、このせ」

「えー!」


 琉珀さんが俺を抱き上げる。もうちょっと見てなさいって感じだ。


「現状ね、あっちのほうが強い。だからあそこにこのまま混ざりに行ったら、俺達瞬殺されるからね」

「えっ!?」

「だからほら。ゲームと同じ。もうちょっと観察してよ」


 動き分かれば、回避もしやすくなるからさって。

 なるほど!! 琉珀さんあったまい~!


「で、実際どうよ、蓮。このせ連れて、前に出るのはお前だけど」

「あー……鴉は、落とせる。頭以外は。樹木も斬れる。水はわかんねーかも。あれ龍系だろ? 俺の刀通らねー可能性ある」

「おっけー。俺の糸で捕まえるのも、どうかな。少しの間かも」

「んじゃ、俺が目暗ましとかで隙作って~……って、話してるうちに」


 そろそろ終わりそう、って映澄師匠が瞳細める。

 俺もその真似して、瞳細めながら、戦いを見る。

 うーん、よくわかんないな!


「俺は? 何すればいい?」

「このせは、あの樹木と相性いいだろ。とりあえず燃やせ」

「りょーかい!」


 ぶわわと尻尾が膨らむ心地。蓮先生の方の上が俺のポジション!

 それじゃいこうか~ってきらきらと輝く道が作られる。

 映澄師匠の鏡だ~!

 その上を足場にして跳ねながら、俺達は樹木の足場のあるほうへ~!


「このせ!」

「はぁい!!」


 燃やせ、ってことだな! じゃあ、思いっきりやっちゃう!!

 おっきな、炎の玉~!!


『おっとぉ!? 突然水上に、いちにさん……たっくさんの火の玉!!?? これは、新人チームだ~!!!』


 わー! 実況余計なことを~!!

 他チームの意識が、こっちむいちゃった!!

 足場の木々がざわざわ動く。一瞬止まって、一気にその枝をこっちに突き出すように伸ばしてきた!

 これ炎の玉ぶつけちゃう!? って投げようとしたけど。


「いい、俺が斬る」


 蓮先生が――何もない場所から黒刃を現して全部、斬った!!

 水上に落ちる。その木々も足場にして俺達は向かう。琉珀さんの糸が伸びて、それを束ねて道にした。


「このせ、今!」


 琉珀さんの声に俺は正面、でかい足場に向かって、火の玉を全部、落とす!

 咄嗟に育って壁を作る樹木も全部燃やす。何もかも燃やす。

 背中の毛が逆立つ心地。燃やすの、楽しい!


「もっと、やる!」


 さらに増やして。足場も、飛んでるやつも、そのまま――水だって、燃やし尽くす!!

 喉がからからになる感覚。

 はは、俺ン中で何かが、喜んでる!!

 水にぶつかる火の玉がじゅわって大きな音立てる。一気に真っ白――水蒸気だ!

 しかも熱い! 俺のせいだけど!!


「お前のせいで視界不良すぎる!」

「わーごめん!」

「蓮! お前の周りに糸張っ、上!!」

「! 一撃だけ!」


 琉珀さんの糸。映澄師匠の鏡が上からの水流を跳ね返す。でも水の方が強くて鏡が割れた。

 蓮先生がすぐさま動いて、逃れる。けど、まだ残ってた!

 続けて突風――これ、は!


「先に落としておくのはお前達のほうだったな」


 視界が綺麗になる。水蒸気が吹き飛ばされて、そこに真っ白な翼。

 錫杖が振り下ろされたのを、蓮先生が受け止めた。重、って口から零れたのが聞こえる。

 正面、白い人!

 その赤い瞳と、目があった。


「このせ!」

「!」


 名前呼ばれた。それだけでわかる。

 これは、やれって言ってる! 俺も炎――でも、さっきやりすぎて頭がくるくるして。

 けぽっと小さな炎が出ただけ。


「っ!」

「ご、ごめん~」


 蓮先生の肩の上でぺそっとなる。きらきら光る糸が錫杖に絡んで、動きを遅らせた。黒刃が弾いて、無数の切っ先が白い人に向いてる。


「落ちろ!!」


 蓮先生の声と一緒に黒刃が白い人に突き刺さる。でも身をかわして、その腕一本――血で染めてる。く、くしざし~!!

 ま、真っ赤~!!!!


「くそっ、避けやがった!」

「!?」


 容赦ないことしようとしてた!!

 でも。


「は――ははっ」


 俺の耳はぴくっと動く。

 笑い声だ。怪我したのは久しぶりだ――って、吹き飛ばされるのと同時に聞こえた。

 ぞわっとする、相手の妖力に叩かれる感触。

 これ、無理ゲーじゃない?

 また水に落ちる。冷たい感覚。動けなくて、沈む。

 そこから先の記憶はない。

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